NAKAHARA-LAB.net

2014.2.7 17:12/ Jun

「個」に閉じず、「他者」に拓かれた「プロフェッショナルの学び」!?

「互療」(ごりょう)という言葉をご存じでしょうか?
 
 その言葉は、鍼灸師・竹村文近さんの著書「響きあう鍼灸」の中で、僕もはじめて目にした言葉です。

「互療」(ごりょう)とは「鍼灸師がペアになって相手に対して”相互”に”治療”を行うこと」。
 鍼灸の世界にも、医学の世界にもズブのドシロウトなので、それがどの程度一般的かはわかりませんが、竹村先生によると、それは臨床家にとって「貴重な学びの機会」なのだそうです。
 第一に、「互療」はお互いの「施術方法」を確認し、そこから学ぶ契機になると氏はいいます。
 どのような鍼を選び、どのような治療を行うのか。鍼灸は通常、カーテンの中の密室で治療を行いますので、それを見ることはそれらをプロフェッショナル同士、確認しあうことは、大変よい学びの機会になります。
 ひとかどのプロフェッショナルだから、その仕事は、うちに閉じやすい。仕事の様子をブラックボックスにせず、あえて、拓いていくことはとても大切なことです。
 第二に、「互療」は、プロフェッショナルの身体そのものを知ることができます。人は、仕事によって、その仕事に応じた身体が構築されることはいうまでもないですが、互療の機会とは、臨床的実践によって構築された「プロフェッショナルの身体」を確認することができます。
 人は仕事によって身体が再構築されます。わたしもよく鍼灸師さんのところに治療にいくのですが、先生は「その人の身体をみれば、その人の仕事がだいたいわかる」といいます。プロフェッショナルの身体をプロフェッショナルが見つめれば、それは何らかの学びの契機になるのかもしれません。
 第三に、それは、そもそも臨床家自身を「ヘルシー」にします。だって相互に「治療」してるのだから。
 患者に対して治療を行い、健康な身体をつくりだすものは、その身体を研ぎ澄ませ、自らも健康な身体でなくてはなりません。「互療」とは、そのような身体をつくります。
 ▼
 今日は「互療」という「学びの機会」であり、自らの身体を相互に健康に保つような機会について書きました。非常に興味深い機会だと思います。
「個」の技を研ぎ澄ませる必要のある専門家だからこそ、その育成は「個」に閉じない。むしろ、それを「他者に拓いていく」。アタリマエのことなのですが、そのことの大切さを学びました。
 そして人生は続く
 

ブログ一覧に戻る

最新の記事

「最近の学生」や「新入社員」を「十把一絡げ」にする「便利な言葉」が嫌いなのである!?

2025.8.31 08:12/ Jun

「最近の学生」や「新入社員」を「十把一絡げ」にする「便利な言葉」が嫌いなのである!?

2025.8.26 20:52/ Jun

【無料イベント参加者募集中】アンコンシャスバイアス研究の最前線!:アンコンシャスバイアスとうまく付き合う方法をさぐる!?

【イベント参加者募集中】若手社員と学生の本音から考える「新卒オンボーディング」

2025.8.25 18:16/ Jun

【イベント参加者募集中】若手社員と学生の本音から考える「新卒オンボーディング」

大学教育の改善は「データ」だけでは進まない!? : 高等教育機関のIRについて思うこと!?

2025.8.14 21:25/ Jun

大学教育の改善は「データ」だけでは進まない!? : 高等教育機関のIRについて思うこと!?

2025.8.7 19:10/ Jun

ポジティブフィードバックも、ネガティブフィードバックも学べる決定版!「増補改訂版 フィードバック入門」本日発売です!