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2016.11.22 07:16/ Jun

新刊「アクティブ・ラーナーを育てる高校」がAMAZON予約がはじまりました!:「アクティブラーニングの教育論」から「アクティブラーニングの組織論」へ

 新刊「アクティブ・ラーナーを育てる高校」のご案内です。このたび、学事出版様から、
   
 アクティブ・ラーナーを生み出す学校づくり
  
 に関する書籍を発刊させていただくことになりました。せんだって月刊高校教育の付録として発刊された書籍の一般販売版です。すでに、AMAZONで予約販売がはじまっております!
 ご興味があうようでしたら、どうかご購入をご検討いただけますと幸いです!
  
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アクティブ・ラーナーを育てる高校―アクティブ・ラーニングの実態と最新実践事例
  
 こちらはマナビラボプロジェクトの初年の成果をまとめ、かつ、多くの現場の管理職の先生方にご寄稿、対談をいただいた成果をまとめたものです。
  
  ▼
   
 本書は、アクティブラーニングを生み出す組織づくりに主に焦点をあてた本です。
    
 まず第1章では、僕が「アクティブ・ラーナーを育てる学校:今、なぜ高校でアクティブ・ラーニングなのか」と題し、小論を述べています。
  
 その後、花巻北高校長の下町壽男先生との対談を通し、アクティブ・ラー ニングを生み出す学校づくりについて理解を深めます。下町先生からは、学校長がどのように学校に刺激を与え、先生方を盛り上げていくのかについて、大変興味深いお話を伺うことができました。
  
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 第2章では「高校でのアクティブ・ラーニング推進の実態」と題しまして、東京大学中原淳研究室が日本教育研究イノベーションセンターと行ってきた全国調査の統計データをご紹介いたします。
 この数字からは、日本全国においてアクティブ・ラーニングの実践がい かなる現状にあるのかを知ることができます。
  
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 第3章では、「どうするアクティブ・ラーニング? 先生のための相談室:高校の先生たちはどこで悩んでいるのか」ということで、先生が陥りやすい質問や課題について、解説を行います。
 3章はさしずめ、先生のための相談室です。
  
 第4章では「学校・自治体での先進事例」と題しまして、管理職あるいは行政として「アクティブ・ラーニング」にどう向き合うかについて、 岡山県立林野高校長の三浦隆志先生、和歌山県立桐蔭中学校・高校長 岸田正幸先生、岡山県立和気閑谷高校長 香山慎一先生、北海道教育長 日高教育局長 赤間幸人先生、静岡県総合教育センター 総合支援課高校班のみなさまの小論をお寄せ頂きました。
  
 第5章では、私どもの東大の研究スタッフによって、アクティブ・ラーニングを考えるための学術的キーワードを 10 個解説させて頂いております。
 アクティブ・ラーニングは、ジョン・デューイをはじめとする経験の哲学、プラグマティズムに端を発する学びのあり方です。
 これらのルーツをた どることは、より骨太の実践をつくりあげるために必要なことのように思います。
 アクティブ・ラーニング、経験学習、リフレクション、など、様々なワードについて専門的な解説を行っています。
  
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  ▼

 この本は「変な本」です。
    
 それは、冒頭から、
  
 本書は「アクティブラーニングの本」ではありません
   
 というセンテンスからはじまるからです。
  
 小生、曰く
 

 本書は「アクティブ・ラーニング」の本ではありません。
  いいえ、正確に本書の特徴と内容を表現するならば、「本書はアクティブ・ラーニングだけに焦点化した本ではない」ということになるのでしょうか。
 本書は「アクティブ・ラーニングが何か?」については論じますが、 それ以上に、「アクティブ・ラーニングを生み出す学校をどのようにつくっていくか」に焦点を当てた本ということになります。

  
 これが本書で、筆者らが訴えたかったことです。
   

  
  ▼
  
 時代は、ジェネラルに「アクティブラーニングを語る時代」から確実に動いています。
  
 高等教育の教育革新、FD(ファカルティディベロップメント)などに端を発したアメリカ初の「アクティブラーニング談義」は、既に多くの人の知るところとなりました。
 今後は、日本の教育現場、社会状況、仕事の世界にあった、地に足のついたアクティブラーニングムーヴメントが、今後展開していくことになるでしょう。
   
 今後社会に必要なひとつの流れ・・・それは「教科のなかにアクティブラーニングをいかに埋め込んでいくか」あるいは「教科のなかで、どのような問題をだし、どのようなかたちでアクティブラーニングを実現するか」という視点です。これは、本書で筆者らが取り組んだことではありません。ですので、本書ではこちらをカバーできません。
    
 もうひとつの流れ・・・それは「アクティブラーニングの組織論」であり、これが本書で取り組んだことです今後のアクティブラーニングの議論は、「アクティブ・ラーニングの教育論」から「アクティブ・ ラーニングの組織論」の議論がはじまっていくでしょう。
    
 ここで「アクティブ・ラーニングの教育論」とは、どうやってファシリテーションをすればいいのか、どうやってペアワークさせるのかという教育方法論的な議論です。
    
 次に目指すべきは「アクティブ・ラーニングのような新たな授業を、いかに組織として生み出していけるか」ということであり、それが「アクティブ・ラーニングの組織論」です。
 こちらが、筆者らが本書で探究したことのひとつです。
    
 今後は、学校のマネジメント層が、新しいことをしていくためには、どんな学校をつくればいい のかということを考える段階に入っているのではないでしょうか。
  
 最後になりますが、対談・ご寄稿で御協力頂いた花巻北高校長の下町壽男先生、岡山県立林野高校長の三浦隆志先生、和歌山県立桐蔭中学校・高校長 岸田正幸先生、岡山県立和気閑谷高校長 香山慎一先生、北海道教育長 日高教育局長 赤間幸人先生、静岡県総合教育センター 総合支援課高校班のみなさま、心より御礼を申しあげます。
   
 また、ともにプロジェクトを推進してきた日本教育研究イノベー ションセンターの信實秀則さん、山本康二さん、高井靖雄さん、河合塾 の成田秀夫さん、船津昌己さん、伊藤寛之さん、赤塚和繁さん、石鍋京 子さん、近藤宏樹さん、片山まゆみさん、ライターの友野伸一郎さん、 そして学事出版の二井豪さんには心より御礼を申し上げます。
 なお、今はプロジェクトから離れていますが、プロジェクトの立ち上 げ期に大変お世話になった谷口哲也さん(河合塾 東北本部)にも心より御礼申し上げます。
  
 また、編集者の二井豪さん、そしてレイアウトをご担当頂いた三宅由莉さん、イラストをお寄せ頂いた加納徳博さんにも心より感謝いたします。ありがとうございました。
  
 最後に、我らが東大チームです。
 山辺恵理子さん、木村充さん、田中智輝さん、堤ひろゆきさん、市川紘子さんも本当にお疲れさまです。
 皆さんと伴走しながら本プロジェクト、そして本書を編むことができていることに喜びを感じます。本当にありがとうございました!
    
 本書を通して、「アクティブ・ラーニングそのもの」の理解もさることながら、「アクティブ・ラーニングを生み出す学 校という組織のあり方」に人々の関心が集まり、着実で、しかし、ゆるぎない未来の学びが日本全国に生まれ得ることを編者として願ってや みません。
  
 本書の後には、来春に北大路書房より、山辺恵理子・木村充・中原淳(編)日本教育イノベーションセンターの続新刊も刊行されます。こちらもどうかご期待下さいませ!
  
 そして人生はつづく
  

  
 ー目次はこちらですー

はじめに
1 なぜ、今、高校でアクティブ・ラーニングなのか
アクティブ・ラーナーを育てる高校―なぜ、今、高校でアクティブ・ラーニングなのか― 中原 淳
【対談】授業改革は学校改革に通ず 下町壽男×中原 淳
  
2 高校でのアクティブ・ラーニング推進の実態
  【管理・運営の面から】
1.学校教育目標に多いのは「人間性」「豊かな心」「思いやり」「感謝」
2.教育課程作成の中心は教務主任
  (1)原案作成に携わるのは教務主任が圧倒的に多い
  (2)教育課程編成に携わるのは教頭・教務主任が中心
  (3)教育課程の評価・改善の機会は年に2、3回以上
  (4)教科横断的な学びはこれから
3.校内研修の回数と内容
  (1)校内研修は年3回
  (2)校内研修の内容
  【参加型授業の実施・取組状況】
1.参加型授業への取組状況
  (1)既に取り組んでいる学校は5割以上
  (2)国語・外国語での実施率が高い
  (3)参加型授業実施校の特徴は?
2.都道府県毎の実施状況
  (1)参加型授業に関する校内研修実施率は群馬県がトップ
  (2)都道府県での違いはあるか?
3.カリキュラム・マネジメントができている学校は参加型授業の実施率が高い
  (1)カリキュラム・マネジメントはできているか?
4.参加型授業の効果は?
  (1)代表者の考えている効果ベスト5
  (2)効果を感じている学校の特徴
5.参加型授業に関する悩みは負担増!
  (1)代表者の悩みベスト5
  (2)悩みを軽減するカギはカリキュラム・マネジメント
  
3 高校の先生たちは、どこで悩んでいるのか どうする?アクティブ・ラーニング!:先生のための相談室
Q 「アクティブ・ラーニング」という言葉だけはよく聞くのですが、そもそもアクティブ・ラーニングの定義がよくわかりません。
Q なぜ今、「アクティブ・ラーニング」という言葉が盛んに使われるようになったのですか?
Q アクティブ・ラーニング型授業を導入することによって、授業の進度が遅くならないでしょうか? 教科書を最後までやり終えることができるか、不安です。
Q グループワークを取り入れたいのですが、いつもグループ分けで頭を悩ませています。どのようにグループ分けをしたらよいのでしょうか?
Q どうしてもグループでの活動に入っていけない生徒には、どう対応すればよいでしょうか
Q アクティブ・ラーニングの導入に向けて、校内の教員の足並みがそろいません。生徒が混乱しそうで心配です。
Q アクティブ・ラーニング型の授業をしようと思っても、ICTの設備や教具がありません。
Q アクティブ・ラーニング型授業にはどんな手法があるのですか?
Q 教員の授業準備の負担が増えそうで心配です。
Q アクティブ・ラーニング型授業で、受験学力がつくのか心配です。
  
4 学校・自治体での先進事例
●学校での先進事例1
管理職として「アクティブ・ラーニング」にどう向き合うか 三浦隆志
●学校での先進事例2
AL型の授業やカリキュラムマネジメントを推進する 岸田正幸
●学校での先進事例3
学校全体でのアクティブ・ラーニングを推進するために 香山真一
●自治体での先進事例1
北海道におけるアクティブ・ラーニング推進の取組 赤間幸人
●自治体での先進事例2
教育センターを拠点とし、アクティブ・ラーニングを推進する 静岡県総合教育センター 総合支援課高校班
  
5 学びを考えるためのキーワード10
KEYWORD1 アクティブ・ラーニング
KEYWORD2 21世紀型スキル
KEYWORD3 高大接続
KEYWORD4 参加型学習
KEYWORD5 合教科
KEYWORD6 チーム学校
KEYWORD7 カリキュラム・マネジメント
KEYWORD8 経験学習
KEYWORD9 リフレクション
KEYWORD10 パフォーマンス評価
  

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