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2006.7.9 09:59/ Jun

村上隆「芸術起業論」

 僕は村上隆さんの作品が好きなわけではないです。また、彼の芸術の価値もきっとわかってはいません。
 だけれども、だからこそ、彼の述べることには、耳を傾けようと思うのです。いわく、「芸術には世界基準の戦略が必要だ」。この主張は、新鮮に思えるのですね。

 —
 なぜ、これまで日本人アーティストは片手で数えるほどしか世界で通用しなかったのでしょうか。
 単純です。
 「欧米の芸術の世界のルールをふまえていなかったから」なのです。
 欧米の芸術の世界は、確固たる不文律が存在しており、ガチガチに整備されております。そのルールに沿わない作品は、評価の対象外となり、芸術とは受け止められません。僕は欧米のアーティストと互角に勝負するために、欧米のアートの構造をしつこく分析しました。
(中略)
 欧米では、芸術にいわゆる日本的な曖昧な「色が綺麗」的感動は求められていません。知的な「しかけ」や「ゲーム」をたのしむというのが、芸術にたいする基本的な姿勢なのです。欧米で芸術作品を制作する上での不文律は、「作品を通して、世界芸術史での文脈をつくること」です。
(中略)
 繰り返しますが、認められたのは、「観念」や「概念」の部分なのです。
(中略)
 芸術作品の価値は、発言で高めるべき・・・

 —
 芸術がなんたるかを僕はしりません。しかし、彼は、「世界で勝負するために必要なこと」の一つの側面を見事に喝破しているような気もするのです。

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