NAKAHARA-LAB.net

2006.6.14 00:41/ Jun

ユビキタス!、ユビキタス!、ユビキタス!

 昨日は、慶應義塾大学の岩井さんを、Learning bar@Todaiにお招きして、「ユビキタスコンピューティングの最先端」についてのレクチャーをいただきました。
慶應義塾大学 岩井さん
http://vu.sfc.keio.ac.jp/faculty/profile.cgi?0+tailor
 おかげさまで、慶應義塾大学で進めている数々のユビキタス関連のプロジェクトについて理解を深めることができました。この場を借りて、感謝します。お忙しいところ本当にありがとうございました!
 岩井さんのプレゼンテーションをお聞きしていて、いくつも「ムムム、なるほど」と思うところがありました。また、数多くの参加者から、「面白かった」という感想が寄せられました。とてもよい時間だったと思います。
 —
 それにしても、岩井さんの発表を見ていて「やっぱりそうだよなぁ」と感心してしまったのは、彼のすべてのプロジェクトで、「わかりやすいデモムービー」を制作していたことですね。岩井さんは、それを適宜交えて、ご自分の研究の解説を行ってくれました。
 中には、特に「企業との共同研究」の場合のビデオなんかは、かなり予算をかけて、本当の役者をつかっているものもありましたね。「10年後の未来のビジョン」を描くみたいなビデオでしたけれども。
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 岩井さんは、「ムービーがなければ、本当にシステムが動いているのかわからないでしょう」とアタリマエのようにおっしゃっていたけど、なかなかそれはできないことですね。そこまでアタマが回らないし、面倒だしね。
 でも、工学研究の場合、特にそうだと思うのですが、研究そのものの新規性に加えて、自分たちの研究を「いかに魅せて」、「いかに社会にインパクトを与えるか」っていう視点は非常に重要だと思うんです。
 僕の個人的な意見では、教育工学研究もまさにそうなのではないかと思います。
 「あなたの見ている教育現場の光景が、僕の工夫によって、こんな風に変わるんです」
 ということについて、「理屈」「根拠となるデータ」・・・そして「絵」をもって提案することが重要だと僕は思っています。「絵」というのはたとえね、スチルでもムービーでもよいのですよ。
 そうした努力が結局、大学と社会の循環的な関係を維持することにもつながると思うのです。
 こういうと、「人生いろいろ、研究者いろいろ」ですので、「そんな宣伝屋みたいなことできるかぁ!」とか、いろいろな考えがでてくると思いますけど、他の意見を否定する気は毛頭ありません。
 少なくとも僕にとっては、研究の究極ゴールは、「教育現場の革新に資すること」です(それぞれの研究者によってゴールがあってよいと思います)。そのためには、大学の中、アカデミックワールドという閉じた研究系で、研究をコンサマトリーに行うことには、ある種の限界があるように思うのですよね。そして、その限界をこえるためには、「絵」は重要です。
 もちろん、学位をとるとか、そういう目的のためには、キチンとした手続きにしたがって論文を書くトレーニングも非常に重要です。それはやらなあかんし、むしろリゴラスに行うべきだと思います。
 でも、そういうトレーニングフェイズでないのであれば、「自分の研究をいかに魅せて、いかに提案するか」ということにも注意が払われてもいいのかな、と思うのですよね。そして、「絵」のうち、ムービーっていうのは、非常にパワフルなメディアになると思いました。
 僕も、ある時期から、自分の研究プロジェクトでは、ムービーをかなり意識的につくったり、残したりしていますけれども。今日の発表は、その重要性を再認識させてくれました。
 見ててオモロイ、見ていてワクワクする、見て腑に落ちる。
 で、現場にいる人が「やってみよう」「試してみよう」と思う。
 現場の革新は、やはりそういうところからはじまる部分も少なくはないのではないのかなぁ、と思います。

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