NAKAHARA-LAB.net

2021.3.12 08:12/ Jun

企業合併のときに必要なのは「自分の会社を選び直すこと」である!?

 企業合併のときに、従業員の方々には、もう一度、自分で、自分の会社を「選び直してもらう機会」を提供しなければならないのです
  
  ・
  ・
  ・
  
 せんだって、日本で長く企業合併(M&A)に取り組まれてきた岡俊子さん(経営コンサルタント、現在はソニー・ハピネットなどの取締役)に聞き取り調査をさせていただくご縁を得ました。
   
 この調査は、現在進めている「PMI(企業合併後のマネジメント:Post Merger Integration)」の研究の一環です(斉藤光弘さん、東南裕美さん、柴井伶太君、佐藤聖君らと、数年続けている共同研究)。
 今回の聞き取り調査は、岡さんが斉藤さんがつとめていたコンサルファームの元・社長であったご縁から実現しました。
  
 お忙しい中、調査にお応えいただいた岡さんには心より御礼を申し上げます。ありがとうございました。アレンジしてくださった斉藤さんには、心より感謝いたします。
   
 ▼
  
 岡さんのお話は、どれも長年の経験に富む素晴らしいものでしたが、その中でも冒頭にご紹介した言葉が、非常に印象的でした。
  
 このお言葉は、
  
「買収した企業から、被買収企業への従業員へ、どのような働きかけをを行わなければならないのか」
  
 という問いに関連して発せられたものです。
  
 岡さん曰く
  

「まずひとつは、安心安全のメッセージですよね。自分のこれまでの仕事が失われるわけじゃないよ。大丈夫だよ。そういうメッセージを、なるべく早く発しなければなりません。
  
もうひとつはですね、自分で、自分の会社を「選び直してもらう」ということなんです。
  
M&Aっていうのは、従業員からすれば、ある日、突然、自分で「選びとって入社した会社」から、一夜で状況が変わってしまうことなんです。
  
企業合併後の会社ってのは「自分で選んだ会社」が「自分で選ばなかった会社」に変わることなんです。

ですので、もういちど、仕事をする意味を考えてもらい、自分で「再び選び直した会社」にしてもらう機会を提供しなくてはなりません。そのために必要な、新たな役割への期待を、経営陣は発しなくてはなりません」

  
 ・
 ・
 ・
  
 なるほど、とわたしは思いました。
  
 多くの従業員にとってM&Aとは「巻き込まれ事故」のように、ある日、突然ふってわいてくるものです。ある日突然「巻き込まれ事故」にあって、多くの従業員は「動揺」しているでしょうし、不安にかられているひともいるでしょう。
  
 そういうときには、まず「衛生要因」を整える必要がある。それが岡さんのいう「安心安全」なのだと思います。
    
 その次には、「仕事の意味」を再構築する機会がなければならない。自分が「ふたたび会社を選び直した」と思えるように、貢献への期待、新たな役割への期待を述べなければならない、ということなのかな、と思いました。
  
 ▼
   
 M&Aの研究は、年度末を迎え、ピークに入ってきています。
 M&Aを仕掛けている方々へのヒアリングを終え、M&Aを経験した方への聞き取りも進行しています(ここでは、ご迷惑をおかけしてしまうことも多く、多くのお名前をご紹介することができません。心より感謝しております!)。
  
 この知見は、秋頃に「企業合併と組織開発(仮題)」といったかたちで、書店に並ぶものと思われます。ダイヤモンド社の編集者、小川敦行さん、構成を担当してくださっている井上左保子さんには、心より感謝いたします。
  
 最近、従業員としてM&Aを経験なさった方へ
  
 あなたの「新しい会社」からは「安心安全のメッセージ」と「貢献期待のメッセージ」がありましたか?
  
 最近、M&Aを行い、企業を買収なさった方へ
  
 あなたは、従業員の方々に「安心安全のメッセージ」と「貢献期待のメッセージ」を提供しましたか?
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
   
新刊「チームワーキング」発売初日・重版決まりました! AMAZON「マネジメント・人材管理」カテゴリー第1位! 手にとってくださった皆様、お読みいただいた皆様に、心より感謝いたします。
   
 
https://amzn.to/3esCOrW
   
すべてのひとびとに、チームを動かすスキルを! これがこの書籍のメインメッセージです。チームを動かす新たなアイデアとして「チームワーク」ではなく、「チームワーキング」を提唱しています。データとビジネスケースから、チームを動かすためのスキルを学び取ることができるようになっています。どうぞご高覧くださいませ!
 
ニッポンのチームをアップデートせよ!
  

  
  ーーー
      
拙著「経営学習論」の増補改訂版が、東京大学出版会より刊行されました。新たに「リーダーシップ開発」の章を追加し、カバーの装いも変わっています。人材開発の基礎的な理論を体系的に学べる一冊です。どうぞご高覧くださいませ!
      

    

      
  ーーー
  
【新刊予約発売中】
新刊「学校がとまった日」の特設サイト完成!&予約販売開始中! 緊急事態宣言・全国一斉休校で「学びを継続できた子どもの特徴」は?学びをとめないために学校にできることは?:書籍の内容が概観できます!どうぞご覧くださいませ!
  

新刊「学校がとまった日」の特設サイト
http://toyokan-publishing.jp/stop/index.html
  
新刊「学校がとまった日」予約販売開始中(AMAZON)

   
  ーーー
     
【好評発売中】1on1の失敗・成功ケースをまとめ、映像教材を中原とPHP研究所さんとで開発しました。失敗しない1on1について、具体的なイメージをもって学ぶことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
     
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
   
  ーーー
   
【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます! 
     
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
   
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q    
   
  ーーー
  
ラーニングエージェンシーさんと中原研究室の共同研究により開発した「女性の視点で見直す人材育成:トランジションサポートプログラム」のご提供がはじまっています。ライフステージに応じて、役割移行を支援する、きめ細かい研修となっています。共同研究の成果は書籍「女性の視点で見直す人材育成」としても刊行されています。
  
女性の視点で見直す研修 トランジション サポート プログラム
https://www.learningagency.co.jp/service/transition/
 

 
 ーーー
    
。AMAZONの各カテゴリーで1位記録!(会社経営、マネジメント・人材管理・労働問題)。
長時間労働はなぜ起こるのか? 長時間労働をいかに抑制すればいいのか? 大規模調査から、長時間労働の実態や抑制策を明らかにします。大学・大学院の講義調で語りかけられるように書いてありますので、わかりやすいと思います。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
また残業学プロジェクトのスピンアウトツールである「OD-ATRAS」についても、ご紹介しています。職場の見える化をすすめ、現場マネジャーが職場で対話を生み出すためのTipsやツールが満載です。ご笑覧ください。
    

対話とフィードバックを促進するサーベイを用いたソリューション「OD-ATLAS」の詳細はこちら
https://rc.persol-group.co.jp/learning/od-atlas/
   
  ーーー
   
「研修開発ラボ」(ダイヤモンド社)が、フルオンライン化して大幅リニューアルしました。人材開発の「基礎の原理」を学ぶことのできるトレーニングプログラムです。どうぞお越しくださいませ!
    
研修開発ラボ 特別講座「人材育成の原理・原則を学ぶ」
https://jinzai.diamond.ne.jp/seminar/SEMINAR0495/
  
 ーーー
   

     
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
    

    
 ーーー
  
中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
      
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。利用人数20名までは「無料」だそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
    
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
   
 ーーー 
    
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約32000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
   
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun

ブログ一覧に戻る

最新の記事

 あなたの組織には「DE&I(多様性・公正・インクルージョン)」を阻む「3つの壁」が存在していませんか?

2024.5.17 08:34/ Jun

 あなたの組織には「DE&I(多様性・公正・インクルージョン)」を阻む「3つの壁」が存在していませんか?

高齢化による人材開発・組織開発のスキルの「世代継承問題」!?

2024.5.13 08:20/ Jun

高齢化による人材開発・組織開発のスキルの「世代継承問題」!?

2024.5.10 11:01/ Jun

新刊「リーダーシップシフト」完成しました!:全員参加型チームをいかにつくるのか?:もうマネジャーは、ひとりで抱え込まなくていい!

あなたの組織には「社員の主体性」をねこそぎ刈り取る3つの要因がありませんか?

2024.5.10 08:32/ Jun

あなたの組織には「社員の主体性」をねこそぎ刈り取る3つの要因がありませんか?

同じようなビルと、同じようなテナントが、果てしなく続くユートピア!?

2024.5.7 08:35/ Jun

同じようなビルと、同じようなテナントが、果てしなく続くユートピア!?