NAKAHARA-LAB.net

2007.2.16 09:18/ Jun

壊れたテープレコーダ : プロフェッショナル 北山安夫氏

 昨日のNHK番組「プロフェッショナル」は、庭師の北山安夫氏だった。
 北山氏は、高台寺など京都の名だたる名園をつくってきた。無駄をそぎ落とした簡素な中に、ありのままの自然の石を組み合わせる。その手法が、拝観者を魅了する、という。
 僕は庭のことは「激シロウト」なので全くわからないけれど、彼が番組前半で漏らしたいくつかの言葉が、心に響いた。弟子12名を厳しく指導する場面で、彼がふと漏らした言葉。
 —
 自分は壊れたテープレコーダ
 10回で分からない子には11回、
 11回で分からない子には12回言わなければならない
 —
 昨日のビデオから判断するに、おそらく庭師のワザの習得は、徒弟制を背景にした「非段階的学習」であると思われる。
 一般に、非段階的学習というと、師匠のワザを見て模倣し、型を習得することからはじまると言われている。いつか自分の型を生み出すためには、まず「見て、マネる」ことが必要だ。
 しかし、そのあいだ、師匠も指を加えて見ていていいわけではない。
 やはり言わなければならないことは、言わなければならない。何度であっても、厳しく言わなければならない。たとえ、「壊れたテープレコーダ」のように振る舞わざるをえないとしても、である。
 しかし、徒弟制を背景にした学習は、「声なき学習」であってよい、と思われているのではないだろうか。
 人は言わなければわからない。
 言ってもわかるとは限らない。
 学習は、教えるものにとっても、かくも厳しいものである。

ブログ一覧に戻る

最新の記事

高齢化による人材開発・組織開発のスキルの「世代継承問題」!?

2024.5.13 08:20/ Jun

高齢化による人材開発・組織開発のスキルの「世代継承問題」!?

2024.5.10 11:01/ Jun

新刊「リーダーシップシフト」完成しました!:全員参加型チームをいかにつくるのか?:もうマネジャーは、ひとりで抱え込まなくていい!

あなたの組織には「社員の主体性」をねこそぎ刈り取る3つの要因がありませんか?

2024.5.10 08:32/ Jun

あなたの組織には「社員の主体性」をねこそぎ刈り取る3つの要因がありませんか?

同じようなビルと、同じようなテナントが、果てしなく続くユートピア!?

2024.5.7 08:35/ Jun

同じようなビルと、同じようなテナントが、果てしなく続くユートピア!?

あなたの周囲では「従事軍」を見かけませんか?:モリモリに盛った「職務経歴書」の裏側にあるもの!?

2024.5.6 16:14/ Jun

あなたの周囲では「従事軍」を見かけませんか?:モリモリに盛った「職務経歴書」の裏側にあるもの!?