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2006.12.7 10:13/ Jun

あっ、それは、もしかするとインドで処理されたかも?:トマス=フリードマン「フラット化する世界」

 2003年、アメリカの所得税申告2万5000件を処理したのは、インドである。2004年には、それが10万件になり、2005年には40万件になった。
 アメリカの中小病院のCTスキャンの読み取りをしているのは、インドやオーストラリアである・・・。
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 先日買ってもらった「フラット化する世界」を読み終えた(山本さん注文ありがとう)。
 
 いまや世界は、グローバリゼーション3.0の事態に突入している。地球上のあらゆる場所にいる人間との共同作業が可能になり、インド、中国、オーストラリアへのアウトソーシング、オフショアリングが可能になった。
 世界をフラットにした要因には、様々なものがある。本書では、これを丁寧に紹介している。
 1)共産主義の崩壊
 2)インターネットの普及
 3)共同作業を可能にした新しいソフトウェア
 4)コミュニティパワーの活用
 5)アウトソーシング
 6)オフショアリング
 7)サプライチェーンマネジメント
 8)インソーシング
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 などがあるだろう。いずれも、この十年くらいに胎動した動きばかりである。これらの要因が複雑に絡み合い、世界のフラット化がはじまった。
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 読み終えたあとの感想は、「ほほーなるほどねー、うまく整理しているよなぁ」であった。が、同時にどこか空恐ろしいものも感じた。
 要するに、本書で述べられている世界的現象とは、「情報通信技術を活用して、労働賃金の安い地域に済む人々/これまで労働力として組み入れられてこなかった人々に部分的単純労働を引き受けさせることで、人件費をさげるというビジネスモデル」であると思われる。
 が、それを推し進めていった場合、いつかは、それらの労働力を供出する人々が豊かになれるのだろうか。まぁ、現地で働くよりはよい賃金がでているんだろうけど、いつか部分的単純労働から抜け出す方策はでてくるんだろうか、と思った。
 まぁ、僕は経済の専門家ではないので、このフラット化のはてにあるものはわからない。が、どこか手放しで喜べなそうな事態が待っているような気がしてならなかった。
 あなたはどう思いますか?
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付記
 教育の事例としては、「アメリカの子どもをテレビ会議で教えるインドのオンライン家庭教師」の話がのっていた。これに類する事例としては「テレビ会議を活用して、フィリピンの女子大生に英語のマンツーマンレッスン」をさせるという事例もある。
 
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