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2006.5.4 08:18/ Jun

「変貌する北の国」から:東京化、アメリカ化する社会

 数日前の日記にも書きましたけれど、北海道は、「アメリカ」並みの「車社会」です。
 「1人1台」というのは言い過ぎかも知れませんけど。でも、感覚として、多くの家では、複数台の車を所有しているように感じます。
 とにかく土地が広いんです。土地は、もってけドロボー状態。
 レンタルビデオ借りにいくのでも、ちょっと、醤油を切らして買いにいくのでも、相当の距離を移動しなきゃあならないのですね。
 極端な言い方をしますと、
 車をもっていなければ、何もできません
 車に乗らなければ、どこへも行けません
 百歩譲ったとしても、北海道での生活をエンジョイするのは、かなり難しくなってしまうのではないかと思います。
 —
 ところで、「1人1台の車」を、ひとつの家庭で所有するには、それなりの可処分所得があることが前提になります。昔は生きていくので精一杯でしたので、とてもそんな「贅沢」はできませんでした。
 「1人1台の車をもつ」という状況が生まれるのは、高度経済成長をへて、家庭の可処分所得が増大するに従って、加速していったのではないかと邪推します。
 「高嶺の花」から、「1家に1台」、そして「1人1台」へ。オヤジやオフクロの感覚からすると、「1家に1台から1人1台」への移行は、10年前から15年前の話だそうです。
 本当に、最近、多くの人々が自動車を所有するようになってきました。そして、それを「前提」とした社会が生まれつつあります。
 社会全体が、「車をもっていることを前提とした社会」に移行しているのかもしれませんね。
 それが典型的にあらわれるのが、国道沿いにできる大規模店舗だと思います。
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 思わず地平線を拝みたくなるほどの広大な土地に、無料の駐車スペースをつくる。で、あまりお金をかけない建物をたてて、大量生産された商品をならべます。大量に仕入れるので、当然に安い。
 さらには、食料品から電化製品まで、すべてのモノはここでそろいます。専門店にいく必要なんてありません。全国統一で規格化された商品、僕らがいつも見ているような商品が、所狭しとガーッとならんでいます。
 そして、こういうモールには、人があふれていますよ、老若男女すべての人々が。おいおい、どっからわいてきた?、と思わずツッコミを入れたくなる。オマエだって、わいてきた一人だろう!
 なぜか?
 先ほどの理由に比べ、もうひとつ理由がある気がします。こうした大規模店舗には、すべての世代に働きかける様々なファシリティが、準備されているのですね。
 広大な敷地をいかして、子どものオムツをかえる部屋、年寄り専用の便所などがちゃんと用意されているんです。これは便利だ。あと、子ども向けの乗り物カートもあります。これは、キラーコンテンツだ。
 —
 そのあおりを、まともに受けているのは駅前の一等地にある商業エリアですね。専門店や、いわゆる百貨店があつまっているエリアです。
 旭川の場合、買い物公園というところがあります。ここは一年中歩行者天国のショッピングエリアなんですが、あまり最近は元気がない。人通りも少ないです。
 うーん、というか、本当にどこも青色吐息。シャッターが閉じているお店も本当に多くなってしまいました。
 まぁ、このストリートの商店の主人たちは、いずれももう定年を迎えているっていうのもあります。つまり、加齢による自然減。でも、その変数だけでは、説明がつかないほど、どんどんとシャッターがおりているような気もします。
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 僕がここにいた15年前は、まだまだ活気があったんですけどね。寂しい気持ちを禁じ得ません。
 駅前がどんどんと寂れていく。それに反して、郊外の台規模ショッピングモールに新しい商圏がうまれる。いわゆるドーナツ化現象であり、アメリカ化そのものです。
 —
 駅前の商店街が、別に、手をこまねいているわけではないと思うんです。ショッピングモールに対抗し、なんとかしようとしている。しかし、なかなか難しいのは下記の理由によるのではないでしょうか。
1) まず駐車場を確保出来ない。確保出来たとしても、一等地ゆえに有料とせざるをえない
2) これらの商店や百貨店では、正社員を雇用していることが多いため、どうしても人件費がかさむ
3) ショッピングモールで売っている商品とは差別化をはかりたいのであるが、そうした高級品を購買する社会階層が、田舎にはなかなかおらず、差異化がはかれない
 僕は、経営学が専門ではないので、上記の仮説は推測によるものです。データもありません。「わたしの経済論」「居酒屋談義」です。
 ですが、上記の指摘が仮に正しかったとしたら、かなり挽回は難しいということになりそうです。
 特に1)から2)は何とか営業努力でカバーとしたとしても、3)のあたりは、かなりシンドイ。
 たとえば、東京だったら、銀座、日本橋というブランドがあるので、差異化戦略をとりやすいし、そういうブランドを消費出来る社会階層がふんだんにいる。それから比べると、田舎は難しそうですね。
上記とは異なった戦略を、何とかたてる必要があるようですが・・・。どういう戦略がありえるのか、僕は専門家ではないのでわかりません。
 —
 今日も、ショッピングモールに出かけました。綺麗で、整然としていて、とても過ごしやすく、楽しいですね。北海道にいるという感覚を忘れてしまいます。
 そして、そこで買い物をしていると、複雑な感覚をもちます。そこに、「東京」と「アメリカ」を感じるのです。
 東京で買える流行にのった、綺麗な、規格化された商品が、東京と同じようなディスプレイで並んでいる。そこに東京を感じます。大量生産、大量消費・・・そして、駐車場にならんだ千台の車を見ていると、そこに、「アメリカ的なるもの」を感じざるを得ません。
 北海道にあらわれた「東京」と「アメリカ」・・・それは長期的には、北海道に何をもたらすのでしょうか。
 Only God Knows…

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