NAKAHARA-LAB.net

2007.6.18 07:00/ Jun

制作者の苦労:デジタル教材設計論

 僕の大学院講義「デジタル教材設計論」も、はやいもので、もう「折り返し地点」まできましたか、うん?、まだ?。先日は「Jasper」についての発表でした。
 Jasperは、何らかのかたちで「教材に関係する人」ならば知らないでいることが許されない教材ですね。泣く子も黙る認知心理学者のジョン=ブランスフォードさんたちが、巨額の費用をかけて制作したビデオ映像教材です。
 ブランスフォードさんたちは、「知識」や「スキル」が発揮されるための条件として「文脈」を考え、当該知識やスキルを教授する際に、文脈に「錨づけて(Anchored)」教授することを考えました。
 リアルな文脈を再現するのが、ビデオ映像というわけです。これを数学とか、科学教育の文脈で実現したのが、Jasperプロジェクトという映像教材になりますね。
 —
 それにしても、大学院生さんがやってくれる「教材の紹介プレゼンテーション」を、教室の後ろで聞いていて、いつも思うことがあります。つい、「制作者の立場にたって、あー、これは創るの大変だったろうな・・・」と考えてしまうのです。
 嗚呼、Jasperも相当大変だったでしょうね。
 なにせ、「Anchored Instruction」というコアコンセプトを「ひねりだす」のも一苦労なのに、それを実現する「カリキュラム」を構築し、台本書いて、役者を雇って、ロケをして、さらには応用問題のドリルをつくり、ティーチャーズマニュアルをつくって・・・これだけやって、ようやく「パッケージ」にしたはずです。
 何度となく評価も繰り返したでしょう。きっと、つくっては壊し、壊しはつくってじゃないのかなぁ・・・。おそらく、そのあとには、様々な先生方に使ってもらうためのプロモーション活動だってあったはずです。また論文、書籍もたくさんでていますからね・・・。
 今回、講義で扱っている教材は、どれも、その背後には、制作者、あるいは研究者の苦労があります。授業にもう少し時間の余裕があったら、そういうのも話せるといいんだけどね。そこまでは1時間半の授業では、なかなか難しいですね。
 これから、さらに段々と複雑な原理に基づく教材がでてきます。あと「半分」、まだ?、まぁ、いいや、僕自身が一番楽しみにしているかもしれません。

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2025.4.28 08:31/ Jun

優れたリーダーは「かつがれ力」を発揮する?

2025.4.24 12:39/ Jun

あなたの近くに「崩壊」しているものはありませんか?:「崩壊」は突然「ちゅどーん(爆音)」ではない!

あなたは、データを「愛していますか」?:データ自体が何かを「語り始める」くらいまで、あなたは、データに向き合っているのか?

2025.4.14 18:11/ Jun

あなたは、データを「愛していますか」?:データ自体が何かを「語り始める」くらいまで、あなたは、データに向き合っているのか?

自分の所属する「組織(ハコ)」によって、あなたは「有能」にも「無能」にもなりえる件

2025.4.6 18:11/ Jun

自分の所属する「組織(ハコ)」によって、あなたは「有能」にも「無能」にもなりえる件

わたしのサバティカルは「旅するサバティカル」and「学び直しのサバティカル」に決めました!:「ひょっこり・ひょうたん島」で「錆び付いた刀」を研ぎ澄ます!?

2025.4.1 18:20/ Jun

わたしのサバティカルは「旅するサバティカル」and「学び直しのサバティカル」に決めました!:「ひょっこり・ひょうたん島」で「錆び付いた刀」を研ぎ澄ます!?