NAKAHARA-LAB.net

2006.3.21 01:26/ Jun

小学校での英語の必修について

 全国の93%の公立小学校では、「総合的な学習の時間」などを利用して、英語教育を実施しているそうですね。
 もちろん、ここで英語教育の程度は、「歌やゲームなどの英語に親しむ活動」から「基礎英会話」まで、きっと幅があるでしょうから、93%という数字をそのまま鵜呑みにはできません。でも、僕は全くの門外漢ですので、「へー、そんなに英語教育が試みられているんだ」と、素直に驚きました。
全国の公立小学校、93%で英語教育
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060317ur03.htm
 うーん、素直に驚いているのならいいのですが、英語教育の世界って「一言ある人たち」と、いろんな「思惑」が渦巻いているから怖いんですよね・・・あんまり不用意に発言ができない(笑)。
 おまけに「英語にルサンチマンをもっている人」が多いのか、なんだかしらないけれど、やれ「今すぐ早期教育するべきだ」とか「日本人なんだから、日本語をやるべきだ」とか「どうせ日常的に利用しないで忘れちゃうんだから、英語なんて高校にはいってから選択制でいいとか」とか、まぁまぁ、「わたしの受けた英語教育の悲劇に基づく、わたしの教育論」が満載の世界です。
 実は、僕は今年から2年かけて英語教育のプロジェクトに着手することになっていて、去年あたりからいろんな文献を読んでいます。いろいろな人に勧めてもらって、日本語で読めるものはだいたい読みました。
 で、門外漢ながら誤解をおそれず言えば、「データに基づいた議論」発見するのが難しいってことがよくわかりました。研究の世界でも、「べき論」とか「わたしの英語教育論」が渦巻いている。
 もちろん、「データに基づいたすぐれた研究」もあります。いくつかの研究には、「なるほどー」と膝をうってしまいました。そういう地道な研究の知見をもとに、英語教育が論じられるべきだと思います。
 —
 ところで、話を上記に戻して「全国の公立小学校、93%で英語教育」ということですが、このことと「全国の公立小学校、英語を必修化」ということには、ものすごい差があるんだと思います。
 とかく、前者をきくと、すぐに後者を思い浮かべがちですが、「総合的な学習の時間で選択的に英語が試されること」とと、「英語を小学校で必修にすること」の意味は違いますね。
 必修となると、カリキュラム、教科書はつくらなアカンし、教員研修だってしなくてはなりません。全国には小学校が22865校あって、そこには41万人の教員が勤務しています。その教員の中で、中学校英語の免許を有しているのはわずか約15000人だそうです。
文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/015/06020613/001.pdf
 人によって違うでしょうし、ALTや中学校教員の導入が検討されていると思いますので一概には言えませんが、それにしたって、すべてをそれに依存することはできません。
 そして、もし必修になるのだとしたら、どう考えても小学校教員の再研修の問題が生じます。これは大変なことです。
 いずれにしても、この問題は、少しゆっくり時間をかけて議論するべきではないかと思っています。
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