NAKAHARA-LAB.net

2013.9.2 06:13/ Jun

本気で夢中になった出来事は、Twitterではつぶやけない!?

 最近では、以前よりもあまり見られなくなってきたことのひとつに、「Twitterを使ったイベントの実況中継」があります。
 今、仮に、あなたが、あるイベントやセミナーに参加しているとします。その様子をTwitterなどのソーシャルメディアを利用して、自分のフォロワーにお知らせする、あれです。僕も何度か、それを実践したことがあります。
 ちょっと前のことになりますが、ある学術講演会に参加した際、「今日は体調もいいので(!?)、久しぶりに、いっちょ、あれ、やってみるか」と思って、会場に入りました。
 しかし、結論からいうと、僕は、この日、このイベントを「実況中継」できませんでした。
 それはなぜか?
 皆さん、なぜだと思います?
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
 それは、その日の話題が、非常に面白く、かつ、考えさせる内容だったからです。
 そこで語られる最新の研究内容を、自分事として引き受け、「自分だったら、どうするか?」を考えていたら、あっという間に、時間がたってしまいました。
 つまり、「無我夢中になってしまったせいで、Twitter実況中継ができなかった」ということです。
  ▼
 この出来事は、我がことながら、非常に興味深く感じました。もちろん、僕が「実況中継するスキル」を持たないわけではありません。しかし、本当に「考えていた」ときに、それはできなかった。
 そして「自分が本気で夢中になった出来事は、Twitterではつぶやけないのではないか」という仮説をもつようになりました。
 Twitterでつぶやくためには、まずはOn-goingで進行する出来事の中から、「何をつぶやくか」を峻別し、その場の言葉を選び取ります。
それをそのまま「つぶやいて」も、おそらくは、その場にいない「聴衆」にとっては、意味不明になってしまうこともあるので、ここで大切になってくるのが「編集行為」です。
 いったんは、「聴衆(他者)の視点」にたって、メッセージの編集を行い、発信となるものと思います。
 そして、ポイントがこの「他者の視点」にたつという部分です。これが「出来事への没我」と矛盾するのではないでしょうか。
 すなわち「ある出来事に本気で夢中になっている状態」で、かつ「他者の視点にたつ」ということが、ややトレードオフである気がするのです。それらは、どうも別の認知的資源を必要とするように感じます。
(別な言い方をしますと、もし、仮に、あなたが「ほにゃらら会」に参加しているとします。その際、「ほにゃらら会、面白い!無我夢中!」とつぶやくことがあるのだとしたら、このつぶやき自体が、論理矛盾ではないか、ということです。なぜなら「つぶやきができる」ということ、イコール、「無我夢中ではない」ことをコノテーションしてしまうから、笑)
 ▼
 今日の話は、全く検証をへていない、かつ理論もクソもへったくりもない、僕のいわば「つぶやき的妄想」です(いつもの!)。その真偽は、わたしは専門ではないので、わかりません。
 また、Twitterで実況中継する行為や、それを利用した試みの価値を、毀損したいわけでもありません。「言葉を選ぶ – 編集する – 他者の立場にたって発信すること」は、今後、大切になる認知的活動のようにも思います。
 実際、これまで、僕も何度も自分のイベントで、Twitterのハッシュタグを利用してきました。
 しかし、「本当に夢中になっているときに、つぶやけないかもしれない」というのは、個人的には、なかなか味わい深い出来事でした。
 そして人生は続く。

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2025.11.8 08:51/ Jun

【帰ってきたラーニングバー!?】中途採用社員を「定着・活躍」させる仕組みづくり!: オンボーディングの最前線を学びませんか?

2025.9.26 18:14/ Jun

立教大学中原ゼミの学生たちが開発した「ワークショップ」が、220社の内定者教育・新人教育として導入されています(感謝感激!):8期生・新プロジェクト・キックオフ会を開催しました!

「最近の学生」や「新入社員」を「十把一絡げ」にする「便利な言葉」が嫌いなのである!?

2025.8.31 08:12/ Jun

「最近の学生」や「新入社員」を「十把一絡げ」にする「便利な言葉」が嫌いなのである!?

2025.8.26 20:52/ Jun

【無料イベント参加者募集中】アンコンシャスバイアス研究の最前線!:アンコンシャスバイアスとうまく付き合う方法をさぐる!?

【イベント参加者募集中】若手社員と学生の本音から考える「新卒オンボーディング」

2025.8.25 18:16/ Jun

【イベント参加者募集中】若手社員と学生の本音から考える「新卒オンボーディング」