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2007.7.24 07:15/ Jun

「喋り過ぎない講演」をめざす

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 講演では、なるべく「喋りすぎない」ようにしています。
 そう言ったら、奇異に感じる方もいらっしゃるかもしれません。一般には「喋ること」イコール「講演」ですので、「喋らない講演」というのは、どこか変に聞こえるかもしれない。
 でも、実際、僕はなるべくそうするようにしています。もちろん、「全く喋らない」わけではありません。時間数にして、自分が喋る時間を3分の2くらいに押さえようとしているのです。
 残りの3分の1は、講演を聴いてくださっている参加者の方が、お近くの参加者の方と「喋っていただく時間」にしています。簡単なディスカッションですね。で、数分時間をおいて、僕がマイクをもって、「どんな話がでたか」を聞きにいくようにしています。
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 なぜ、こういうスタイルにしているのか。それは2つの理由からです。
 1つめは、「一方向的に喋る講演」の学習効果が低いことを、研究者として僕自身が、よく知っているから。
 一般に、半年時間をおいた遅延テストでは、7割から8割の参加者が、当該講演で語られた内容を、すべて忘却すると言われています。人間は「忘却する動物」といわれていますが、このレートをなるべく下げたい、と思います。それには、僕が「喋りすぎないこと」が重要なのです。
 ふたつめは、その方が「参加者の満足度があがる」から。
 もちろん、これは賛否両論があります。「僕が喋り続ける講演」を望まれる方も、少なくありません。
 しかし、割合を見ると、「僕が喋り続ける講演」よりも、「参加者自身が喋る講演」の方が、評価が高いことが多いのです。みんな、実は講演の時間に、「聞く」よりも「喋りたかった」んだね。
 —
 僕が、このスタイルをとったのは、米国留学から帰国した2004年の秋からです。それまでの僕の講演は、かなりOne-wayスタイルでした。
 オモシロイというか、皮肉だよね。だって、喋っている内容は、当時の自分の専門であった「協調学習」だったりするわけじゃないですか。でも、喋っている内容は「協調」なのに、「講演のスタイル」は「アンチ協調学習スタイル」だったりする。これにまず矛盾を感じました(笑)。おいおい、矛盾しちゃってるぜ>自分。
 あと、米国留学時代、いろんな方の発表をむこうで聞いて、やり方によっては、いわゆる「講演でもインタラクティヴにできる」ということを学びました。
 で、思い切って、というか、おそるおそる、それをやるようになったのです。で、今に至っている。もちろん、今もおそるおそる、だけど。
 というのは、インタラクティヴにするってのは「怖い」んですよ。何がでてくるかわからないし、タイムマネジメントも難しい。よっぽど、機関銃のように喋った方が「楽」に感じます。だから、今も、おそるおそるです。
 —
 今日の午後は、講演です。それも300名規模。
 これまで150名規模の講演では、インタラクティヴにやってきましたが、300名ははじめてです。成功するのかどうかわかりませんが、頑張ります。
 そして人生は続く。
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