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2023.7.19 08:08/ Jun

蛇の健寿司で「夏の寿司」を楽しむ

「わたしも、あと、何年やれるか。あと10年いけるか、いけないか」
      
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 ドキっとした。行きつけのお寿司屋さんのご主人が、そんな一言を漏らしたからだ。そのお寿司屋さんは「蛇の健寿司」という。代が変わるなどなど、これまで、紆余曲折はあったのだろうけれど、あと、もうすこしで100年になる、渋谷・神泉に店をかまえるお寿司屋さんだ。
   
 
   
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 僕は、20代後半で、蛇の健寿司の暖簾をくぐらせてもらった。当時の僕は、寿司屋とは無縁の、「場違い極まりない」存在だった。「茶髪、ロンゲで、こ汚いジーンズをはいた、あんちゃん」が、寿司屋さんのカウンターに座った。
    
 それは、たまたまだった。
    
 テレビ番組をつくっていた我が妻の(25年前、当時は、AD?)、メンター役になっている方が、このお寿司屋さんの常連で、ことあるごとに、僕を連れてきてくれた。大房潤一さんである。残念ながら、彼は、数年前、この世を去った。彼は、僕や、僕の周囲のプロジェクトに対して、いつも大きなサポートをしてくれた。
     
 大房さんは、わたしがもっとも尊敬している方だ。
 今なお、彼のことを思い出すたびに、涙さえとまらない。
   
 
  
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 それから爾来25年・・・・。
     
 僕は、蛇の健寿司に、一年に数回出かけるようになった。何か嬉しいことがあったとき、お祝いをしたいとき、誰かといっしょに楽しい時間を過ごしたいとき、蛇の健寿司は、いつも、美味しいお魚とお酒で、それにこたえてくれた。
    
 僕は、やがて、自分の知り合いや仕事仲間を、蛇の健寿司にお連れするようになった。
    
「せんだって・・・・さんが、お越しになりましたよ」
   
 久方ぶりにお邪魔したときには、ご主人が、僕の知り合いの来店を教えてくれる。みなさん、お元気そうなんだな、と安心する。
 なかには、長らくご無沙汰になってしまっている方もいる。寿司屋で聞く達者の知らせに、「みんな頑張っているんだな」と思う。
 蛇の健寿司は、僕にとって、自宅のリビングにいるかのような感覚だ。何の気負いも、立場も、考えていない。ただ、うまいものを食い、ただただ、気の置けない人々と歓談しているだけだ。
    
 それがである・・・
  
「わたしも、あと、何年やれるか。あと10年いけるか、いけないか」
   
 はびっくりした。おそらく謙遜して、半分冗談で、思わず、口に出てしまったのかなとも思った。ただ、ご主人の年齢と、厳しい朝の仕入れと仕込みを考えると、「蛇の健寿司もいつまでもある」わけではないことは(あらゆる店舗・事業が、永遠など存在しない)、ほろ酔い気分の僕の頭にも、ピンときた。もちろん、「それは困る」。「困るったら、困る」のある。
 蛇の健寿司には、ずっと通いたい。できるだけ長く、ご主人や、おかみさんには頑張ってもらいたい、と願っている。
   
「また近いうちに、来ます」
  
 と、ご主人とおかみさんにご挨拶して、店を出た。
     
「ほんとうに、近いうちに、何度も来なきゃな」
   
 と帰路、何度も思った。
   
  
   
  ▼
   
 蛇の健寿司のカウンターは、おそらく今日も多くのお客さんで賑わっているだろう。
 夏の魚といえば、かつお、ウニ、新子、関あじ・・・どれも今が旬の魚だ。
  
 きっと、ご主人は、今日も、丁重にお客さんの要望を聞き、お魚のことを丁寧に教えてくれているだろう。
  
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「近いうち、また来ます」
    
 僕自身も、季節が変わらぬうちに、また暖簾をくぐりたい。
 今年のうちに、もう一度、夏の魚を味わいたいものである。
  
 そして人生はつづく
  

 
■蛇の健寿司(最寄りは井の頭線・神泉、渋谷からは10分くらいはかかります)
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13237387/
       
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