NAKAHARA-LAB.net

2006.6.4 11:37/ Jun

英語教材をつくる人は・・・

 金曜日、土曜日と新プロジェクト「なりきりEnglish」の合宿が東京大学で開催された。1時間に1度10分程度の休みを設けるものの、長時間にわたってぶっとおしの会議・・・最後に至っては、もうメンバー全員「ヘロヘロ」であった。
 そのかいあって、プロジェクトの基本方針はかなりの部分が決定された。あとは、これを僕が整理し、制作チーム側に伝える仕事が来週以降に残されている。タフな交渉が予想されるけれど、ここからしばらくは僕がやらなければならないことだ。精一杯努力しよう。
 —
 今回の「なりきり」は、前回の「おやこ」に続く大規模な共同研究だ。
 これは僕の信念であるが、「共同研究」とは「互いに助け合うこと」だけで実施されるわけではない。もちろん、そういう側面もなきにしもあらずである。が、一番重要なことは、メンバーがいかに自分の専門性を持ち寄り、チームに貢献するかが問われる。
 「何を助けてもらうか」よりも、「何を為すか」を全員が意識できるかできないかが重要だと、個人的には思う。この相互貢献性こそは、僕の協調学習研究の、唯一確かな結論でもある。
 今回のチームも、バックグラウンドは非常に多彩である。まだ数名を共同研究者を迎える予定をしているが、それぞれのメンバーが自分の経験や専門性を持ち寄ってくれる。大変心強いし、一緒にやっていて愉快だ。
 時には会議が行き詰まる。長い沈黙が訪れ、疲労困憊することもある。しかし、たとえ議論に疲れても、そのあとには爽快感がある。ちょうどスポーツをしおえたあとのような「爽快感」。会議終了後には、打ち上げをやる。ちょうど、体育祭のあとのような打ち上げ。そういうときの「ビール」はうまい。
 それがあるかぎり、共同研究はやめられない。
 —
 ところで、深夜、「なりきりEnglish」の議事録を見直しながら、企画書を書き直していて、ふと、「深刻なこと」に気づいた。
 ・・・僕が、近い将来、この研究成果を海外で発表した場合、今のままでは少し困った事態にならないだろうか。
 英語教材を開発した本人の英語がどうもなぁ
 という事態である。
 今回はリスニング教材であるから、「英語教材を開発した本人が、発表後の質疑応答で、質問されたことがわからない」というのは、なんとしても避けなければならない。それは「アメリカンジョーク」にもならんぞ。
 まず、オマエのリスニングを何とかしろってーの
 と「厳しいつっこみ」が入りそうである。格好悪いこと、この上ないぞ。
 うーむ・・・。
 一般に、僕のような専門だと、概して、こういう皮肉な事態が生まれがちである。
 たとえば、
 教育方法を教えているのに、授業がイケてない
 協調学習を研究しているのに、協調できない
 学習科学を研究しているのに、学習ヘタである。
 
 という皮肉である。なんか自分で言っていて、胸にグサグサ刺さってくるんですけど・・・。あっイタ!
 それにしても、今度は、英語ですか・・・。
 やらなしゃーないなぁ。
 押入の奥にしまっていた「教材」を、むなしく広げる週末。
 皆さんは、いかがお過ごしですか?

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