NAKAHARA-LAB.net

2016.9.5 07:51/ Jun

経験あるベテランが、新人に仕事を「教える」ときにイラッとくる理由!? : あなたは「歯磨き」を言葉にできますか?

 自分がふだんやっていることを、人は、あまり意識はしないものです。まして、それを言葉にして、人に表現することは、本当に難しい。
  
 ある物事をふだんやっていればやるだけ、そのことが、意識にのぼらなくなります。あらゆる行為が「自動操縦化」してくる。そして、いったん「自動操縦化」してしまった行為を、敢えて意識にあげて、言語化することには、さらなる困難がともないます。
  
 例えば、今、仮にこう問われたら、あなたは、言葉にできますか?
  
 歯磨きとは、いったい何ですか?
 歯磨きとは、どのように行えばいいですか?
  
 これを、歯磨きをまったく知らない人、一度も行ったことのない人に説明してみて、彼 / 彼女が、歯磨きを「できる」ようにしてみてください。
  
 多くの人々にとって「歯磨き」そのものがわからないひとはいないでしょう。
 しかし、それを「言葉にしてみて、歯磨きをしらない人に説明してみて」と言われると、一瞬、ドキッとしませんか?まして、「できる」ようにしてみて、と言われるとなおさら。
  
 歯磨きとは、何のためにするのか? いつするのか?
 歯磨きとは、何からはじまり、何に終わるのか?
 その間には、どのような動作や手続きがあるのか?
 歯ブラシは、どのようにもって、どのように動かすのか?
  
 わたしたちは、そうしたディテールを意識したりすることは希です。歯磨きは何のためにするのか、という目的や、その手続きが「自動操縦化」しているからです。
  
 だから、自分がわかっていることを人に教えるということには、本質的に「ストレス」が伴います。要するに、人に教えるというのは、すこし「イラッ」とする。
  
 自分がアタリマエだと思っていること、すでに意識の影に潜り込んでしまっているもの、自動操縦化していることを、敢えて他人のために思い出し、それを意識にあげなければならない。さらには、それを他人にわかる言葉で説明する、というのは大変なことです。
  
 ▼ 
  
 今日は、人に手続きを教えることストレスの関係を書かせていただきました。新人の皆さんを教えなければならないときに、OJT指導員や管理職の方々が、感じざるを得ないストレスは、こうした理由(メカニズム)によって生まれてきます。
   
 ま、この理由(メカニズム)がわかったところで、何の足しにもならないのですけど。
 わからないよりは、わかっている方が、ストレスは少なくなるってことはありますか(笑)?
  
 そして人生はつづく

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