NAKAHARA-LAB.net

2008.7.9 11:07/ Jun

「地域開発」と「M&A」にひろがる世界

 研究室には、毎日、大学外部から、たくさんのお客さんがお見えになります。
 学校の先生、マスメディアの方々、民間教育企業の方々、一般企業の方々、牧師さん、医療関係者、知財担当者、デザイナー、ITエンジニアの方々など・・・「学び」に関心のある多種多様な方々が、お見えになります。
 最近は、面談にあまり時間を割けなくなっています。また、せっかくご足労いただいたのに、あんまり時間がとれないこと、また十分な「おもてなし」ができないことが心苦しいのですが、そういう方々と日々ディスカッションするのは、心の底から楽しいものです。僕はやっぱり「現場の生々しい話」が好きなんだと思います。
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 最近、ポツポツと増えてきた案件に、「地域開発の担当者」「M&A担当者」の方々との面談があります。
 全く性質の異なる市町村が合併したが、統合後、お互いの住民たちが全くしっくりきていない。
 本来、住民たちが協力して、地域の活性化を推進していかなければ、過疎化はさらに進行してしまうのに、お互い疑心暗鬼になっている。猶予は全くない。この状況を何とか打開するためには、住民たちに何をしかければよいか。
 2つの製薬会社が合併したが、MRの仕事のやり方が全く異なっていて、統一感がない。しかも、人材育成の思想がそれぞれ全く異なっている。片方は経験重視で、片方は専門性重視。これをどういうプロセスで統合することができるだろうか。
 僕は「地域開発」も「M&A」も「全くのドシロウト」なので、ただただお話をお聞きするだけなのですが、なるほど、これらの領域にも「大人の学び」の問題が深く関わっているような気もします。それも、ハンパなく生々しく、ドロドロと。
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 月並みな言葉ですが、現代は「変化」の時代です。
 極端なことを言えば、「昨日」と「今日」、そして「明日」が、すべて異なっている可能性のある時代です。
 僕は、それが「幸せな社会」だとは全く思っていませんが、少なくとも「変化のスピード」は、早まることはあっても、遅くなることはないようです。
 昨日まであった組織や地域が、ある日、突然変わる。昨日まで安定していたものが、ある日突然、コンフリクトの渦中に投げ出される。こういうことは、日常茶飯事なのかもしれません。
 そして、そのたびに「大人」は何かを捨て、何かを得ることを求められます。何かを学び壊し、何かを学ぶこと求められるのです。
 新たにやってくるものに葛藤と怒りを覚えつつ、昨日まであったものにノスタルジーと喪失感を感じ、それでも、人は、今日、自分の目の前にあらわれた「新たな世界」、そこで出会った人々とともに、生きていかねばなりません。
 ここには、すさまじい「大人の学び」の世界が広がっているようです。

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