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2009.2.18 06:59/ Jun

藤井大輔著「R25のつくりかた」を読んだ!

 藤井大輔著「R25のつくりかた」を読みました。R25は首都圏のターミナル駅などで配付されている、リクルート社のフリーマガジンです。
R25
http://r25.jp/
「情報感度がとても高くて、一見クール。でも、一皮むけば結構熱い」という、イマドキのM1層(20~34歳の男性)を読者に想定しています。
 本書は、R25のプロジェクト立ち上げから、読者の本音に迫るリサーチ、編集方法やクロスメディア展開までを、前編集長の藤井大輔さんが綴ったものです。

 大変興味深かったのは、藤井さんたちが、R25の立ち上げのときに、M1層を集めて行ったリサーチについてのお話です。時間がないので、はしょりながらご紹介します。
  ▼
 
 まず、藤井さんたちは1万人のサンプルを対象に定量調査を行いました。そのときにわかってきたのは、「新聞は5割が読んでいない」というM1層のメディア接触頻度でした。
 しかし、その後、グループインタビューを行ってみると、この調査データを覆すことが起こります。なんと、8割の人が「新聞を読んでいる」と答えるのですね。
 つまり、どちらかにウソがあることがわかります。
 そこで、次に行ったのは、インターネットの定量調査で「新聞を読んでいない」と答えた人だけをインタビューに呼んでみました。それでも、やはり、彼らは「新聞を読んでいる」と答えます。
 よく見るテレビ番組は、「ガイアの夜明け」「ワールドビジネスサテライト」と続き、決して「ぷっスマ」が出てくることはありません。
 勘のよい方ならおわかりか、と思うのですが、M1層は「できるビジネスパーソン」として、自分を演出しているのです。新聞を読み、自分の仕事に生かしているという雰囲気を醸し出すことは、彼らにとってのステイタスだということがわかってきました。
 ここで方針を変更し、M1層に背伸びをさせないインタビューを行っていくことにしました。
 すると、M1層は新聞を読みたいと思っているし、上司や先輩にも読め、と言われているのだけれども、「新聞を読むための事前の知識が不足している」ということがわかってきました。
 かくして、R25のコンセプトが洗練されていきます。最終的に行き着いたコンセプトは、「フリーマガジンなのに役に立つ」というものでした。ここから、人気の「ランキン&レビュー」などが生まれてくるのです。
  ▼
 R25誕生までのプロセス、非常に面白く読むことができました。また、いかに対象者の生活の実態に迫ることが難しいのかを感じることができました。「企画」に取り組んでいる方には、おすすめの一冊です。

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