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2009.1.8 07:00/ Jun

ラム=チャラン著「CEOを育てる」を読んだ!

 ラム=チャラン著「CEOを育てる」(ダイヤモンド社刊)を読んだ。

 GE、ノバルティス、コルゲートといった企業が、どのようにして、リーダー、CEOを計画的に育成しているか、について考察している。
 筆者のラム=チャラン氏が提唱しているのは、下記のようなプロセスとしてまとめることができるだろうか。彼はこの制度を「徒弟制度モデル」と呼んでいる。
1.リーダーやCEOになる素質のある人物を計画的、かつ戦略的に「見いだす」仕組みやツールを開発する
2.1で見いだしたリーダー候補者には、上司、経験者などのメンターをつけ、徒弟的制度モデルの中に組み込む。
3.綿密な訓練 – 飛躍的な成長を果たすことができるような成長課題を短期間に連続的にあたえ、フィードバックと練習の中で、リーダーを育成する
4.これら1から3までのプロセスをライン事業部で実行する。かといって、人材開発部の仕事が減るわけではない。むしろ、徒弟制度の「受託者(トラスティ)」として、この制度がワーク(Work)するかどうかをウォッチし、それぞれのラインの議論に参加していくべきである。
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 ラム=チャランの主張は、学習理論的には、アンダース=エリクソンの「熟達化」の議論+ブラウン&ドゥグットの認知的徒弟制度のモデルを足して2でわったような話である。
 このモデル自体に、特段の新しさがあるわけではない。しかし、こうした理にかなった方法で、実際に企業において計画的、かつ戦略的にCEOを育成している事例があることが、興味深かった。
 リーダー育成やCEO育成に興味をもつ人にとっては、一読の価値ありと思う。
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 余談になるが、本書を読んでいて、少しびっくりしたことがある。それは下記の記述である。
徒弟制は企業幹部には場違いな言葉のように聞こえるかもしれないが、決して、そんなことはない。
(p3)
 徒弟制といえば、僕にとっては – というより、学習研究をやったことのある人にとっては – 「アタリマエのコンコンチキ、アタリマエダのクラッカー」状態の学習モデルのひとつである。
 そういう人は、皆、企業であっても、組織であっても、学校であっても、おおよそ知識の獲得、伝授されているところには、徒弟制の仕組みを見いだせる、と思っている。
 しかし、どうも、それは世間の常識 – リーダー育成の常識と違うのかもしれないな、と思った。何が新しいか、よくわからなくなる。

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