NAKAHARA-LAB.net

2007.8.19 08:08/ Jun

「オール」がない

 先日、義妹が、いわゆる「オール」の飲み会をやって、朝帰りしてきた。
 夜を徹して話をして、酒も相当量を飲んだはずなのに、元気、元気。少し寝て、次の夜には、また「別の飲み会」に出かけていった。あっぱれ、その「元気さ」には、恐れ入った。若いとは、かくいうものなのか。
 かつては、僕も、「オール」をしたことがある。学生時分には、盆と正月の限られた期間しか帰省せぬというのに、まともに実家で夕食をとったことがない。気の置けない旧友たちと、夜を徹して、遊んで、飲み歩いていた。
 しかし、ここ5年~6年くらいは、そのような経験は全くない。いくつか理由はある。
 まず第一に、悲しきかな「カラダ」がついていかない。おそらく、今、オールで飲み会などやったなら、次の日は「廃人」だろう。アタマは痛いし、胃のむかつきに苦しむ。夕方近くまで、無為に過ごすことになることは目に見えている。
 社会人を長くやっていると、そういう「飲み方」を本能的に避ける。無意識のうちに、いわゆる「守り」に入る。
 第二の理由が家族であろう。この年になってくると、お互いに家庭をもっている人たちも多い。オヤジがベロンベロンになって帰宅する様子は、カミサンにとっても、子どもにとっても、はなはだ迷惑である。
 第三に、これが本質的な理由かな、とも思うのだが、「オール」で語り合うほど話題が、年々少なくなっているような気がする。お互いの近況を話し、いくつかの馬鹿話と、いつもの昔話をしたら、おおかた満足してしまう。
 かつての僕らには、お互いの人生で重なるべき部分が多かった。また、僕らは「無知なるがゆえのべき論」の世界に生きていた。だから言い合いにもなったし、夜を徹して話すこともできた。
 今は、もう別々の人生を歩いていて、そのような「重なり」が少ない。そして、多少なりとも世の中の片鱗を知ってしまった。「そうはいっても、しょうがないよね」というモノイイを覚えてしまった。そんな僕らには、数時間を共有するくらいが、お互いにちょうどよい、のかもしれない。
 話は「する」ものよ。「ある」ものじゃないわ
 そう書いたのは、岸田國士である。もしかすると、「するべき話」の少なさ、レパートリーの少なさが、最大の問題かもしれない。
 
 こんなわけで、最近の僕は「オールがない」。
 オールをしていた頃を懐かしむ一方、なぜだか、少し切ない。

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2025.8.7 19:10/ Jun

ポジティブフィードバックも、ネガティブフィードバックも学べる決定版!「増補改訂版 フィードバック入門」本日発売です!

2025.8.4 11:00/ Jun

新刊「学びをやめない生き方入門」どうぞご高覧くださいませ!

2025.7.19 11:28/ Jun

生成AIを用いて「リフレクションの質」を「爆上げ」する方法とは何か!? 

エンゲージメントサーベイの数字を「こねくり回す」だけでは「組織課題」は見えてこない!?

2025.7.18 18:23/ Jun

エンゲージメントサーベイの数字を「こねくり回す」だけでは「組織課題」は見えてこない!?

2025.7.4 16:20/ Jun

SHRM2025(米国人材マネジメント大会)報告:「巨大な嵐」の到来で、ある日突然、「DE&I」が放送禁止用語になった日、各社は今後どう動くのか?