- CSCL for Higher Education Design Project 2000

What's BASQUIAT PLUS Project ?

 BASQUIAT Plus Project は、BASQUIAT Projectが発展し、2000年6月にリスタートした研究プロジェクトです。

 BASQUIAT Projectにおいて、我々は役割をデザインコンセプトにすえたCSCL(Computer Supported Collaborative Learning:コンピュータによる協調学習支援)ソフトウェア、「rTable(アールテーブル)」を開発・評価しました。この研究成果をふまえて、BASQUIAT Plus Projectにおいては、高等教育機関における遠隔協同学習を支援するCSCLシステムを開発します。

 

 高等教育、遠隔協同学習

 ヴァーチャルユニヴァーシティという概念が頻繁に主張されているように、高等教育における遠隔協同学習は、現在、非常に注目されています。高等教育機関をとりまく現在の社会的状況、経済的状況のせいでしょうか。大学を外に遠隔メディアを用いて「外」に開いていこうとする流れが時代の趨勢になりつつあります。そして、従来の高等教育機関における遠隔協同学習支援システムは、以下のようなシステムが開発され実用化されてきました。

  1. Web-based courseware
  2. インターネットによる動画配信

 1の「Web-based courseware」は現在、最も広く実用化されているツールです。一般には、教材をつくるためのツールや管理ツールもコンポーネントとして実装されており、たとえば、Virtual Uなどの既に大規模に実用化されているシステムが存在します。
 Web-based Coursewareは確かに、最も手軽に高等教育へのアクセシビリティを学習者に保障するメディアですが、反面、知識をパッケージ化し、それを学習者のアタマの中に注入するという発想が、ツールの背後に見え隠れしています。確かに知識をアタマの中に伝達することは、重要ですが、高等教育機関における学習とは、他の学習者との社会的相互作用(議論や討論)の中で、問題を見つけ、共有し、協同的にそれを解決していくといったような学習が志向されてもよいのではないでしょうか。大学での学習の形態として、ゼミナール形式の授業が頻繁に行われていますが、ゼミナールは他者との議論や討論の中で、学習を行う学習形態です。

 2のインターネットによる動画配信も、現在のヴァーチャルユニヴァーシティでは一般によく行われていますが、これも、単体で用いられるとき、やはり1のWeb-based coursewareと同じ問題をはらんでいます。学習は、どこかエライ先生の講義を聴くことだけで自己完結してしまうのではなく、むしろ、そうしたコンテンツを「リソース」として、学習者同士の社会的相互作用(議論や討論)を通して達成されるべきではないでしょうか

 

 以上のような問題点を踏まえ、BASQUIAT Plus Projectでは、以下のようなコンポーネントを組み合わせた統合CSCL環境を開発・評価します。

  1. 学習のコンテキスト付与のためのWebベースの映像コンテンツ配信システム
  2. 学習者同士の建設的議論を保障するrTableシステム

 学習者たちは、この統合CSCL環境上で、以下のような活動に従事することになります。

  1. 議論を行うためのリソースとなるWebベースの映像コンテンツの視聴
  2. 映像コンテンツの視聴後、rTable上で議論を行う

 以上、簡単に本研究プロジェクトについて説明してきました。BASQUIAT Plus Projectは、こうした高等教育機関の議論を中心にした遠隔共同学習をを支援する環境を開発し、評価することを目的にしています。


NAKAHARA,Jun
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