eラーニングの学習効果と大学経営戦略を考える
 -各大学での実践事例報告を中心にして-

   
文部科学省 大学共同利用機関 メディア教育開発センター
平成15年度研修事業「オンライン・コースの手法と戦略」

研修主旨:

  eラーニングを実験から実用化段階に移行するにあたり、直面する問題の中に、「技術」「コスト」「教育効果」の3点があります。安定した技術で確実に、さほどコストをかけずに、目的とした教育効果をあげられる教育をどのように提供できるか、この3変数の関係に配慮して、最適な解を見つける必要があります。

 本研修は、eラーニングを単位化している大学の関係者の方々に各大学の実践事例、具体的な稼働状況・データをご紹介いただき、参加者者全員で以下のような事柄に関して、考察することを目的としています。

 1.eラーニングシステムには何を用いるのがよいのか?
 2.eラーニングにはどのくらいのコストがかかるのか?
 3.eラーニングの教育効果は、どの程度のものか?

 これらの問いに対して考察を深めることで、eラーニングを活用した教育実践を大学経営戦略のどこに位置づければよいのか、というより大きな問いに対する解が見つかる可能性があるかもしれません。なお、研修では、eラーニングの実施を視野においている関係者と情報を共有し、eラーニングの今後のあり方について議論を深めることが期待されます。
   
 大学関係者だけでなく、eラーニングに興味・関心のある方なら、どなたでもご参加できます。ふるってご参加ください。

文部科学省 メディア教育開発センター
National Institute of Multimedia Education(NIME)

研修企画担当
  
吉田 文
田口真奈
中原 淳


第5回 東北大学インターネットスクール
   

日時:

    2004年3月4日(木)

研修講師:

渡部信一氏 (東北大学)
爲川雄二 氏 (東北大学)


概要:

  前学長の一声で始まった東北大学のインターネット・スクール(ISTU)は、大学院全研究科の講義をオンライン化する、海外へも展開するという壮大な目標を掲げ、学内に教育情報研究部という新組織をおいてはじまった。開始後2年を経過した現在の具体的実施状況、将来展望などを報告する。


当日の様子:
  
 午前中は雪という天気予報に出足が鈍ることが心配されたが、天候は回復し、やや寒いながら春の日差しがまぶしかった。
 文部科学省の概算要求を得て全学的に取り組んでいる事例ということで、集まった聴衆はその具体的な話を聞くことに期待があったようだ。

 渡部講師からは、立ち上げの経緯、その後の経過などが、プロモーション・ビデオやパワーポイント資料を交えた、詳細な説明があった。トップダウン式に始まっても、すべての教員がそれにしたがって、授業のオンライン化に着手する状況にならないという問題を、いかに克服していくことが今後の課題ということであった。

 為川講師は、実際にアプリケーションを使用して授業のオンライン化の実演をされた。比較的簡便にオンライン化できるアプリケーションであるにも関わらず、90分の授業をオンライン化するのに5時間25分程度かかると状況も報告され、オンライン化の手間の問題を明らかにされた。

毎日新聞による記事
http://www.mainichi.co.jp/edu/edunews/0403/08-1.html

研修資料:

当日のパワーポイント配付資料(渡部)

当日のパワーポイント配付資料(爲川)

研修点描

研修
 

  

  

第4回 全学必修の教養教育の効率化
   

日時:

    2003年11月13日(水)

研修講師:

穂屋下 茂氏 (佐賀大学)
角 和博氏 (佐賀大学)


研修概要:


 晴天にめぐまれ、研修会場には多くの参加者がつめかけた。

 穂屋下講師、角講師からは2002年度から開始したネット授業について報告が行われた。

 佐賀大学のネット授業は独自のLMSである「NetWaker」によって公開されている。授業は、学習者がいつでもどこでも視聴することができるインターネット上のストリーミングビデオとして公開されている。このビデオの作成にあたっては、独自のスタジオでおこなっている。

 休憩を挟み、質疑応答の時間では、LMSから学内の組織運営にわたるまで多岐に渡る質問が寄せられた。参加者は熱心にメモをとっていた。

毎日インタラクティブ「教育」のトップページ
http://www.mainichi.co.jp/edu/index.html

研修資料:

当日のパワーポイント配付資料


第3回 学生参画型授業の国際展開 
   

日時:

    2003年8月8日(水)

研修講師:

   玉木欽也氏 青山学院大学
   松田岳司氏 青山学院大学大学院


研修概要:

 青山学院大学の事例−8月8日(金) eラーニングによって既存の「学び」を打破し、「ITによる教育改革」を目指す青山学院大学が中心になって推進してきた2つのe-Learningプロジェクト。これらのプロジェクトで蓄積された成果をもとに、人文系学部や大学院におけるe-Learning実施上の問題点と解決法、学生の体系的参画法について事例を交えて報告する。 

当日の様子:

 あいにくの悪天候にもかかわらず、 研修会場には多くの参加者がつめかけた。

  松田講師は、「eラーニングの導入時・実施時」におけるいくつかの障害を興味深いメタファを用いまとめた。その上で、運営体制や評価に関し手など、実際にeラーニングを実施していくためのTipsについて紹介した。

  続いて玉木講師の方から、AMLプロジェクト、A2ENプロジェクトについて概説があった。eラーニングを実施していく際には、産 - 官 - 学のアライアンスが重要であることが述べられた。

 休憩を挟み、質疑応答の時間では、多岐に渡る質問が寄せられた。松田講師の方から、AMLプロジェクトで使用している実際のシステムデモ画面、メンタリング手法などについて紹介された。玉木講師からは、AMLプロジェクト内の組織構成、教材コンテンツ作成について詳細な説明があった。

毎日インタラクティブ「教育」のトップページ
http://www.mainichi.co.jp/edu/index.html

研修資料:

    松田講師のパワーポイント配付資料

    玉木講師のパワーポイント配布資料

研修点描

研修
 

  

 台風が近づくあいにくの天候となりましたが、非常に数多くの研修参加者にめぐまれました。
  

 

第2回 個別学習による学力の質の保証 
   

日時:

    2003年7月23日(水)

研修講師:

   照屋さゆり
氏 玉川大学・玉川学園女子短期大学
   飯村龍一氏 玉川大学文学部英米文学科
   菊池重雄氏 玉川大学経営学部国際経営学科
   橋本順一氏 玉川大学情報システムメディアセンター

研修概要:

 組織をあげて全人教育に取り組む玉川大学は、教育戦略としてICTに取り組んできた。「いつでもどこでも」学習できる教育環境を整備し、対面授業にはないeラーニングならでは学習を目指す。導入の経緯や実践例、アンケート調査からみる実態や評価、システムを支える学内環境とスタッフの役割について報告する。

当日の様子:

 受付開始の13時前から多くの受講者が集まり始め、会場は研修開始時にはほぼ満席となった。
 会場のあちこちでは、熱心にメモをとる姿がみられた。質問も数多く寄せられた。

  照屋講師は、玉川大学の理念、eラーニングを実施するにあたっての海外視察の経験、Tamagawa 10-year challengeコンセプトの策定、eラーニング実施初期に関して報告を行った。

  続いて飯村講師より、経営学部におけるe-Learningの方針と実施について報告があった。経営学部でのeラーニング実施は、「授業保管型」「授業+アルファ型」「対面授業代用型」「ハイブリッド型」など様々な学習モデルに従って、それぞれ実施されているとのことであった。

 最後に橋本講師からeラーニング実施のためのインフラストラクチャ整備、スタッフィング、コスト等について報告があった。玉川大学のeラーニングは、専門組織の組織的なサポートによって維持し続けられていた。

 休憩を挟み、質問カードを利用しての質疑応答では、数十名を超える受講者から、多岐に渡る質問が寄せられた。最新の標準化技術やLMSの選定など、テクニカルな話題から組織運営などのヒューマンタッチな話題まで質問項目は多岐にわたっていた。

毎日インタラクティブ「教育」のトップページ
http://www.mainichi.co.jp/edu/index.html
  
本文のページ
http://www.mainichi.co.jp/digital/e-learning/new/topics/200308/05-1.html

研修資料:

    照屋講師のパワーポイント配付資料

    飯村・菊池講師のパワーポイント配布資料

    橋本講師のパワーポイント配布資料

研修点描

研修
 

  

 今回もホールでの研修になりました。開場はやくから同時に多くの参加者が詰めかけ(写真左)、研修はスタートしました。
  
質疑
 

  

 質疑では、テクニカルな話題から組織論的な話題まで、多岐にわたる質問が会場からよせられ、玉川大学のeラーニングに対する関心の高さがうかがえました。
  

   

第1回 eラーニングによる教育と社会サービス:

日時:

    2003年6月9日(月)

研修講師:

    山内祐平氏 (東京大学助教授)
    中原 淳氏 (メディア教育開発センター 助手)

研修概要:

  e-Learningサイト「iii online(http://iiionline.iii.u-tokyo.ac.jp/)」は、社会人大学院生を多く抱える東京大学情報学環が、時間と空間を縛らない形で学習機会を提供し、かつ社会サービスの一環として大学の知を公開するためのサイトである。このiii onlineの稼働状況の概要や、質問紙調査等の結果、また、運営のための組織づくりやTipsを報告する。

 また、メディア教育開発センターが開設したeラーニング支援サイト「exCampus.org(http://www.excampus.org/)」を紹介する。 このサイトでは、eラーニングシステムのソースコードや、運用ノウハウを無償で公開している。

当日の様子:

 受付開始の13時前からすでに受講者が集まり始め、会場は研修開始時にはほぼ満席となった。
 大学関係者から企業関係者まで77名の参加があり、会場のあちこちで熱心にメモをとる姿がみられた。

  まず、企画担当である吉田講師(メディア教育開発センター教授)より、日本のeラーニングの概況と、それをふまえた本研修の目的と内容についての説明があった。

  次に、山内講師(東京大学助教授)より、東京大学大学院情報学環のeラーニング支援サイト、iii onlineを始めたきかっけや稼働状況、eラーニング成功のためのポイントと、今後の課題が示された。

  続いて、中原講師(メディア教育開発センター助手)より、iii onlineから発展したeラーニングシステムであるexCampusについて説明があった。exCampusは、exCampus.org(http://www.excampus.org/)からオープンソースとして公開されている。このサイトでは、exCampusのソースコードに加えて、eラーニングサイトの運用ノウハウも公開されている。

 休憩を挟み、質問カードを利用しての質疑応答では、20名を超える受講者から、多岐に渡る質問が寄せられた。著作権やセキュリティに関するもの、また、サイトの具体的な運営方法やコストの明細を教えて欲しいといった質問まで飛び出したが、山内講師、中原講師からは明快な回答が寄せられた。

 また既存の大学という枠組みの中で「e-ラーニングは学内の誰がDriveしていくのだろうか」といった問題にまで議論は発展し、残りの4回の研修の中でもこうした点を角度を変えて考えていくことが確認され、第1回の研修は終了した。


 なお、本研修の様子は、毎日インタラクティブの「教育」に掲載された。第2回以降も続けて下記URLにて本研修の報告がなされる予定である。

毎日インタラクティブ「教育」のトップページ
http://www.mainichi.co.jp/edu/index.html
  
本文のページ
http://www.mainichi.co.jp/digital/e-learning/new/topics/200306/13-1.html

研修資料:

    吉田講師のパワーポイント配付資料

    山内祐平講師のパワーポイント配布資料

    中原淳講師のパワーポイント配布資料

研修点描

研修開始!
 

  

 当初20名を対象にした研修でしたが、90名弱の予想を超える参加者に恵まれ、ホールでの開催となりました。吉田講師による趣旨説明のあと、山内講師によってiii onlineの事例をもとにした講演が行われました。
  
質疑応答
 

  

 会場には、大学教員をはじめ、マスコミ、シンクタンク、教育民間会社の方々など、様々な方々がつめかけました。質疑応答では、実用的な問題から、理念的な問題に至るまで、様々な問題が扱われました。
  


今後の予定:

第4回 全学必修の教養教育の効率化 
   
 佐賀大学の事例−11月12日(水) 佐賀大学は、2002年度から全学必修の教養教育をいかに効率的・効果的に実施するかという問題をeラーニングで解決することをめざした。資金が潤沢にない中、直面する多くの問題を知恵と工夫でのりきってきた。当初の目的がどこまで達成されたか、教育効果を交えて報告する。

第5回 総合大学における全研究科規模のeラーニング 
    
 東北大学の事例−3月4日(木) 15研究科の他、多数の研究所とセンターをかかえる東北大学。それぞれに目的、eラーニングに対する考え方、対象、講義形態が異なる中、全研究科規模のeラーニングをどのように統一あるものにしていこうとしているのか。2年目を迎えたISTUの運営の具体策を、苦労話を交えて報告する。

参加申し込み方法:

 下記URLからオンラインでお申し込みができます。ふるってご参加ください。

 http://www.nime.ac.jp/KENSYU/kensyu_h15/005/main.html


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