Using Argument Representation

to Make Thinking Visible for Indivisuals and Groups

Phillp Bell

rep.Toshihisa NISHIMORI

Graduate school of Human Sciences,Osaka University

-Summary-

■Abstract

この論文では、SenseMakerと呼ばれる、「論」を表現する道具によって、中学生の科学の学習が、ディベート活動の中で、どのように促進されたのかを述べる。この立論の道具は、科学教育のための、インターネットをベースにした学習セット?(learnig suite)である、KIE(Knowlege Integration Environment)の1つのコンポーネントである。論を表現することで、教室での個人的活動、協同的活動の中で、学生の思考は可視化される。この論文では、どのように、認知メカニズムと学習のゴールから、SenseMakerのデザインが形作られたのかを詳しく述べる。また、教室でのいくつかの形成的な、道具の試験について、結果を述べる。学生の論は、科学の本質に関する彼らの認識論的な信念に基づいて、変化する。学生たちは、教室でのプロジェクトの中で、SenseMakerを個別的な学習と、協同的な学習の、両方を支えるために用いたと報告している。

■SenseMaker Rationale

 

 よくWebの、教育での役割を表すメタファーに、「図書館」だとか「オンライン教科書」がある。KIEでは、Webを「証拠(evidence)」としてとらえ、インターネットベースのカリキュラムとソフトウェアの枠組みを作ってきた。KIEは教室での認知的研究をもとにデザインされている。

 学生が、Webからの科学的証拠を用いて、論を構成していくとき、どのようにすればもっともよく支援できるのか?学生はこのような活動から何を学ぶのか?テクノロジーが、どのように、集団での立論と、知識の構成を支援しうるのかについては、数多くのソフトウェアが開発され、探求されてきた。が、科学的標準(scientific criteria)によって生徒を支援するための、一般に受け入れられたアプローチはない。これらの問題を、SenseMakerという、論を組み立てる道具のデザインをめぐって、研究していく。

 長期的なゴールとしては、SenseMakerの知識統合の道具としての利用の探求と、教室でのディベート活動の中で、立論を支えるソフトウェアのデザイン原則を推論していくことである。

■The SenseMaker Argumentation Tool

 KIEの、プロジェクトベースのカリキュラムと、ソフトウェア(Webをベースにした議論道具であるMildredと、SenseMaker)により、学生たちの科学的活動はスキャホールドされる。

 我々のゴールは、学生が、概念的考えを表現し、リフレクトし、他の人の考えを探求し、比較し、区別するのを、助けるような機会と道具を提供することである。

○SenseMaker Design & Functionality

 (図1参照)

 SenseMakerは、Webベースの証拠を、空間的に、カテゴリーにわけて表現することができる。これらの証拠は生徒同士で共有される。

 SenseMakerは、それをつかうと、科学的な立論の中心的側面に従うように、デザインされている。

 KIEには、Guide(?)というコンポーネントがあり(?図2)、これをつかい、個々の証拠にかんして、それをどう評価するのかについてメモがとれる。ここでなされた評価は、SenseMaker上のドットの色に反映される。

○Theoretical Background for SenseMaker

 科学的な論を立てることが、学生にとって、どう有益なのか、について焦点をあてた研究は多い。Koslowskiによれば、子どもたちは、素朴な実在論者のごとき直感的な考えを例証するような証拠に焦点をあてがちである、などの傾向をもつ。そこで、テクノロジーをつかい、より科学的な立論が可能にならないか。

 論の構築に焦点をあてたソフトウェアはたくさんあるが、それらは、(a)グループでの立論を支援する議論ベースの道具(b)個人での論の構築を支援する知識表現の道具、の二つにわかれる。

 SenseMakerは、科学的な立論のための総合的なツールではなく、その(証拠などの)媒介表現をつかって、多くの学生たちの考えにふれることができるというものである。SenseMaker上の表現により、異なった論を立てた学生たちが、お互いを位置づけ、より正しい認識へとすすめる。

【思考の可視化】

 KIEはスキャホールドされた知識の統合と呼ばれる、教授枠組みに導かれている。この枠組みは、“モデルのレパートリー”という、科学学習における生徒たちの認識を記述するための視点に、もとづいている。

 その枠組みの中心的な構成要素の一つが、「思考の可視化」である。我々をこれを以下の3つにわけている。

1. Modeling Expert Thinking

 SenseMakerはニュートンなど歴史的な科学者の論をあらわせる。

2. Providing a Process to Support Individual Reflection

 SenseMakerはふつう、小グループや個人でつかう。これを通し、学生は論をみがくことができる。

3. Promoting the Collaborative Exchange and Discrimination Of Idea

 SenseMaker上で表現することで、他の異なった考えとの交流、比較が簡単にできる。この過程で、考えが可視化され、生産的な会話のトピックになる。SenseMaker上の論自体が、Webそのものなので、他の人々と分かちもてる。とはいえ、SenseMaker上の表現は、学生が学ぶモノすべてを表しているわけではないが、彼らの理由付けを支えている。特定のトピックに関する以前からの知識と取り組ませ、SenseMaker上の論の中で思考を可視化させ、他者との協同で論を比較し、証拠に関する視点を交換し、科学的な考えと現象の間の新しい関係を作り出す。このような個別的また協同的な知識の統合を、SenseMakerによってめざしたい。最近の研究では、認識論的な考えと概念理解の変化の間の関係について、探求している。

■Research Method

 ある中学校の物理の授業。約180名の生徒。“光はどこまで届くのか?”というディベートプロジェクト。Webベースのマルチメディア型の証拠を解釈し、批評するという活動が含まれている。SenseMakerは証拠の組織化によって、学生たちの論の前提を、生産的な個別・グループリフレクションの可能なものとする。流れは、自分のポジションをのべ、証拠を吟味、チームで最終的な論をプレゼンし、議論し、最後にもういちど自分の意見を述べる。というもの。

■Results

○Do student make conceptual Procress?

 セメスターのはじめと終わりに行った記述式の評価テストの中の、光に関する問題への、生徒の説明を、カテゴリー分けした。(図3参照)その変化をみると、ほぼ半分の生徒が、指導したとおりの光のモデルを用いるようになった。

○Can middle school students construct arguments that are scientific?

 学生のevidence noteを分析したところ、70%が、??

○Can a frame library helps students build arguments?

 学生のカテゴリー分けのモデルとして用意した、フレームライブラリーについて、生徒の70%が、役にたったと報告している。ただ理由は様々である。

○Are student arguments related to their ideas about the nature of science?

 科学のプロセスについて、ダイナミックな視点をもつ生徒は、より多様な推論を含んだ論をたて、より多くのフレームを使っていた。

○How do groups of students benefit from argument representations?

 学生が協同的に論を立てていく場面のビデオをみると、SenseMakerが生徒の思考を可視化して、議論に役立っていた。また、push技術によって他のグループにSenseMaker上の表現が送られるので、それをもとに議論がなされた。

○Do students value the individual and collaborative uses of SenseMaker?

 40%の学生が、協同的な学習にSenseMakerが役だったと報告し、同じく40%の学生が、個別的な学習に役立ったと報告している。

【協同的な利用について】

 第一の理由が、レパートリーが社会的に拡張されたということ。第二は、レパートリーが社会的に区別されたこと、第三は、他の人の考えていることへの扉が開いたということ。

【個人的な利用について】

 一番多かったのは、一般的な表現で、個人的な考えが促進されたとい述べたもの、2番目は、より具体的な表現で、個人的な学習が促進されたというもの、3番目は、SenseMakerによってどのように自分が表現することができ

たかを述べたものであった。このようにSenseMakerは個別的、協同的の両方の利用をすることができる。

■Conclusions

 中学生たちは、SenseMakerを用いて、複雑で科学的な論をつくりあげることができた。生徒の学習戦略の違いに対応できるような、学習環境とカリキュラムが必要である。SenseMakerのようなソフトのデザインを通して、教室における、個別的・協同的的思考の可視化のメカニズムがよりわかれば、テクノロジーはより強力な学習のパートナーとなるだろう。

-critique-

 ポイントは、思考の可視化による個別的・協同的な論の構成を支援できるということか。その両方を保障する道具・カリキュラムの必要性は、よくわかるし、SenseMakerはそれにこたえる道具であるように思われる。

 また、楽しそうである。これを使えば、なんとなく、生産的な議論ができるような気がする。ただ、それは、なんとなくであり、これは、評価の記述への不満へとつながる。評価については、生徒間のディスカッションの具体例や、一人の学生の立論の過程などをを記述してくれると、SenseMakerがどのように利用されていたのかがみえるのだが。

-suggestion-

 科学的な議論だけでなく、様々な議論のためにSenseMaker-likeなツールは可能性をもつと思われる。国語の解釈から、学級会の話し合いまで。むろん、インターフェイスは違ってくるだろうが。

 あと、SenseMakerのようなコンピュータを利用したツールならば、立論の過程自体の記録も可能だと思われるので、これの分析もなされてよいだろう。また、このように各自の論をビジブルにして、議論していくと、すばらしい合意に達して終わる、というものでもないだろう。このような道具を使った場合の議論が、使わなかった場合の議論と比べて、どのような違いがあるのか是非、検討してみたい。


NAKAHARA, Jun
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