Cool Research & Project That I Found in 2001



2003/03/22 Update

ファシリテーション

 オンラインコミュニティの維持、ワークショップにおける活動の維持、それらのキーをになっているのは、モデレーションとかコーディネーションとかいわれる活動だ。要するに、人々の活動にプロンプトをあたえ、整理し、まとめていく人々をさす。

 最近、ビジネスレイヤーから、「ファシリテーション」という概念でこれらに関する本が出版されている。参考になる。

堀公俊(2003) 問題解決ファシリテーター. 東洋経済新報社, 東京

フラン リース (著)・黒田 由貴子・P.Y.インターナショナル (翻訳)(2003) ファシリテーター型リーダーの時代. プレジデント社, 東京


2003/01/30 Update

特集:オンラインコミュニティとモデレーション

 オンラインコミュニティに関する本が、だんだんと出版されてきました。

 最近出版されているのは、よく一時期出版されていた、社会心理学なんかの「オンラインコミュニティとは何か」とか「どのような性質をもっているか」というようなノリの本ではないように思います。

 より実践的に、「オンラインコミュニティをどのようにつくりだすか」「オンラインコミュニティをどのように運営するか」「電子掲示板をどのように管理・運営(モデレーション)するか」のような本ですね。

 まずは、一番最近に出版された本です。ボトルメールの事例、関心空間の事例などが紹介されている本です。国内のコミュニティ・ビルダーたちが集まって執筆した本でしょうか。

松岡裕典・市川昌浩・竹田茂(編)(2003) ネットコミュニティビジネス入門. 日経BP出版, 東京

 それまでは、以下の本が定番と言われていました。

エイミー・ジョー・キム(著)・伊東奈美子(訳)(2001) ネットコミュニティ戦略―ビジネスに直結した「場」をつくる. 翔泳社, 東京

 技術的な本もでていました。この領域は、Community Computingと言われている領域でもあるのです。主に人工知能系の研究者の方々が研究なさっている領域です。

Ishida, T., Siekmann, J. & Carbonell, J. G.(eds)(1999) Community Computing and Support Systems: Social Interaction in Networked Communities. Springer Verlag

大沢幸生・松原繁夫・北村 泰彦・角康之・西村俊和(著)・山田 誠二(編)(2002) 情報社会とデジタルコミュニティ―インターネットの知的情報技術 インターネットの知的情報技術. 東京電気代額出版会, 東京

 あと、「コミュニティをマーケティングや集客、技術革新、ライフスタイルの変化にいかせますよー、その事例はこれよ」みたいな本も数多く出版されています。

国領二郎・佐々木裕一・北山 聡(著)(2000) Linuxはいかにしてビジネスになったか―コミュニティ・アライアンス戦略 NTT出版, 東京

石川直人・コミュニティ戦略研究会(2001) インターネットコミュニティ戦略―ビジネスにコミュニティをどう活用するか ソフトバンクパブリッシング, 東京

石井淳蔵・(編)(2002) インターネット社会のマーケティング―ネット・コミュニティのデザイン. 有斐閣, 東京

チャールズ グランサム (著)・大浦 勇三 (訳)(2001)eコミュニティがビジネスを変える 東洋経済新報社, 東京

アンドリュー・M・コヒル (著)・アンドレア・L・カバノー (著) 公文俊平ほか(訳)(1999) エレクトロニックビレッジ―情報ネットワークがひらくコミュニティーの新世界 くまざさ社, 東京

古川一郎・電通デジタルライフスタイル研究会 (共編)(2001) デジタルライフ革命―顧客たちのeコミュニティ. 東洋経済新報社, 東京

クリス・ウェリー・ミランダ・モウブレイ(共編著)(2002) オンライン・コミュニティ―eコマース、教育オンライン、非営利オンライン活動の最先端レポート ピアソンエデュケーション

 マネジメントの領域でのコミュニティといえば、この2冊でしょうか。後者は、コミュニティという言葉はついてないですが、ナレッジコミュニティに関する事例なんかが紹介されています。

エティエンヌ=ウェンガー(著)・櫻井 祐子(訳)(2002) コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践. 翔泳社, 東京

ジム・ボトキン(著)・三田昌弘・米倉誠一郎 (訳)(2001) ナレッジ・イノベーション―知的資本が競争優位を生む ダイアモンド社, 東京

 あと、去年くらいからでしょうか、盛んに「オンライン電子掲示板の管理・運営(モデレーション)」についての文献が、注目されるようになってきました。おそらく、その先鞭をつけたのはイギリス、オープンユニバーシティのビジネススクールのオンラインコースを担当しているSalmonさんだと思います。彼女の主張するモデルは、所々ウーンと唸ってしまいますが、でも、そういうモデレーションのノウハウについて外化したことは、とってもすごいことだと思います。

Salmon, G.(2000) E-Moderating: The Key to Online Teaching and Learning. Stylus Pub, UK

Salmon, G.(2002) E-Tivities: The Key to Active Online Learning. Stylus Pub, UK

Salmon, G.(近刊) E-Training: Key to Professiona. Kogan Page, UK

 以下も同じような本です。「健全で、明るいコミュニティ」をどのようにつくりだすかを解説しています。

Collison, G., Elbaum, B., Haavind, S. & Tinker, R.(2000) Facilitating online learning : Effective strategy for moderators. Atwood publishing, Madison, WI

 ところで、以上、コミュニティなら何でもありでっせ、という感じでご紹介しましたが、やはり最後は学習に戻りたいと思います。Community of Learners、つまりは、学習者のコミュニティの基礎的文献です。

Brown, A. L. & Campione, J. C.(1996) Pcycological thepry and the design of innovative learning environments: On procedures, principals and systems. Shauble, L. & Glaser, R.(eds)(1996) Innovations in learning : New environments for education. Erlbaum, NJ. pp269-325

Brown, A. L. & Campione, J. C.(1994) Guided discovery in a community of learners. Mcgilly, K.(1994) Classroom lessons : Integrating cognitive theory and classroom practice. The MIT Press,CA pp229 - 273


2003/01/01 Update

特集:評価はどうよ?

 一年の計はホニャララではありませんが、来年は評価にこだわった文献を読んでみたいと思っています。

 No Left child behind Actしかり、学力低下しかり。このところ、評価がクローズアップされているのではないでしょうか。

 もちろん、その動向は、e-Learningだって同じだと思います。これまでは、イケイケドンドンでシステムを導入すればよかったのかもしれないけれど、それで結局、どのような学習が生まれ、どう教育の質が向上したのかを説明する必要がでてきているように思います。

 というわけで、評価のことを考えるためのオススメの本。

 まず、Pellegrinoの本ですが、これはAssesmentをどのようにデザインするか、ということを明らかにするために書かれた非常に体系的で、教科書のような本です。

Pellegrino, J. W. & Glaser, R.(eds)(2001) Knowing What Students Know: The Science and Design of Educational Assessment. National Academy press, Washington D.C.

 少し前にでた以下の本とセットで読むといいでしょう。

Bransford, J. J. & Brown, A. L. & Cocking, R. R. (ed.) 1999 How People Learn. National Academy Press.

森敏昭・秋田 喜代美・21世紀の認知心理学を創る会(訳)(2002) 授業を変える―認知心理学のさらなる挑戦. 北大路書房, 京都

 あとは、「開発と評価の結びつき」を考える上で、絶対にはずせないのがFormative Evaluation(形成的評価)といわれる評価手法です。どのようにして、評価を次の開発にいかせばよいのでしょうか。

Flagg, B. N.(1990) Formative Evaluation for Educational Technology. LEA, MA

 Formative Evaluationの実際の事例として非常に有名なのが、教育番組「セサミストリート」ですね。この番組が、研究者とディレクターのコラボレーションによって生まれたことは非常に有名な話です。

 最近、セサミストリートの研究30年をまとめた本が出版されました。これも非常にオススメです。

Shalom M. F. & Rosemarie T. T. (2002) "G" is for growing : Thirty years of research on children and Sesame Street. LEA, MA


2003/06/18 Update

特集:インストラクショナルデザイン

 インストラクショナル・デザインの本を教えてください、という要望を何通かいただきましたので、おすすめの本を何冊かあげてみることにしました。

Tobin. D. R.(2000) All Learning Is Self-Directed: How Organizations Can Support & Encourage Independent. ASTD

鈴木克明(2002) 教材設計マニュアル―独学を支援するために. 北大路書房, 京都

William Lee & Diana Owens(2000) Multimedia-Based Instructional Design : Computer-Based Training, Web-Based Training, and Distance Learning. Jossey-Bass清水康敬・日本ラーニングコンソーシアム(訳)(2003)インストラクショナルデザイン入門―マルチメディアにおける教育設計. 東京電機大学出版局, 東京

Piskurich, M.G., Beckschi, P. and Hall, B.(1999)(eds) The ASTD Handbook of Training Design and Delivery. McGraw-Hill Companies

 いずれの本も、インストラクショナル・デザインの基本的な項目から解説してありますので、おすすめです。


2003/11/21 Update

会社の元気は人事がつくる

 関心があるので、人材育成系の本はよく読むのですが、久しぶりに読んで「ホッとする人材育成系経営学の本」に出会いました。非常に示唆に富む本であり、おすすめです。

 経営学と教育学は密かに似ていているところがありますよね。経営学は、それ固有のディシプリンや方法論をもたない応用的な領域です。その点がとっても似ています。で、こういう領域の本の宿命なのでしょうか、中には、著者自身が何を言いたいのだか、よくわからない本もおおく見受けられるように思います。経営の領域の場合、会社で実務を担当している人でもなく、研究している人でもなく、特に、エラくなったコ○サルタントが書いたものの中には、主張が自分の経験に根ざしていない借り物な上に、概念整理もいい加減なものが多いように思います。この本には、そういう危うさが全くありません、むしろ、積極的に、混乱してしまった各概念の関係を編み直そうとしているように思います。

 この本のことを、中には「アカデミックで概念的な内容が多く、実務に役に立たない」と批判する向きもあるようです。でも、そういう方には、「実務に役にたつとはどのような内容で、それがどのように記述されていればよいのか、はたまた、あなたはそれをどのように活用なさりたいと思っているのか」をお聞きしたくなります。

金井壽宏・高橋潔・守島基博(2002) 会社の元気は人事がつくる―企業変革を生み出すHRM. 日本経団連出版, 東京

 「実践現場で役にたつ」とは、それほど単純なことじゃないのです。


 NAKAHARA,Jun
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