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2019.2.14 06:46/ Jun

あなたの会社の人事は「経営・現場」を強くしていますか?

「あの研修、どうやら、競合の他社でもやってるみたいなんですよ・・・うちも、早速、導入しようかと思ってるんですけどね」
  
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 最近は、随分と少なくなりましたが、僕のように人材開発を研究分野にしておりますと、よく耳にするような言葉が、こちらでございます。一見、何の変哲もない言葉のように見えますが、僕には、どうしても、引っかかってしまいます。皆さんは、どのようにお感じになりますか?
  
 僕が引っかかってしまう理由ーーそれは、この研修が、
  
 「競合他社でも導入されているから、うちでも導入しよう」
  
 というロジックで、今、まさに、担当者の手によって利用されようとしていることです。どうにも、へそ曲がりな僕としては、どうも、このロジックそのものに「引っかかり」を感じてしまうのです。
  
 ▼
  
 そもそもの議論でまことに恐縮ですが、HR(人事施策)の存在意義とは何でしょうか?
 これには様々な答えがあるでしょうが、僕が一番好んでいるのは、
  
 HRは「経営・現場」を「強く」するためにこそ存在する
  
 というものです。
  
「人事施策」というものを通じて、他社よりもよい人材を集め、優れたスキルや知識を獲得させ、さらには組織内に、コアコンピタンス(組織がもつべき知恵のようなもの)をつくりだす。
  
 HRは「経営・現場」に「貢献」して、組織の生産性を高めるため
  
 にこそ存在するのだ、と僕は思います。
  
 もし、仮にこの考え方が「是」とするならば、先ほどの研修導入のロジックは、すこしおかしなことになります。
  
「あの研修、どうやら、競合の他社でもやってるみたいなんですよ・・・うちも、早速、導入しようかと思ってるんですけどね」
  
 本来ならば、「あの研修」を「競合他社が導入している」のなら、それよりも、さらに「抜きんでる効果をもつ研修」の導入を、すこしは「検討」しなくてはならないのではないでしょうか。
 同業他社がやっている研修を、自社も導入しようとするならば、「競争優位」は生まれません。むしろ「横並び」になるだけです。
  
 もちろん「まずは横並びだ」という考え方もあるのですが、「競争優位を生み出すことを最初から放棄する知的態度」は、HRの存在意義に抵触するように、僕には感じます。
  
 ▼
  
 世の中には、
  
 同業他社含めて100社横並びに導入中
   
 といったような人事システムが、存在します。そういう「マス化した人事システム」を目にするたびに、「本当に競争優位を生みだそうとしているのかな?」と、ついつい疑問に思ってしまう今日この頃です。
    
 あなたの会社のHRは、「経営・現場」を「強く」していますか?
 あなたの会社のHRは、「経営・現場」に「貢献」していますか?
  
 そして人生はつづく
  
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