NAKAHARA-LAB.net

2016.8.16 06:09/ Jun

「成果をあげる海外赴任者」は、いったい何が違うのか?

 先だって、ダイヤモンド社さんとの共同研究プロジェクト(D-GATE)プロジェクトで、教材の撮影が行われました。
  
 このプロジェクトは、
   
 海外赴任する日本人が、どのような資質や経験を、赴任前にもっておいた方がよいのか。どういう人が海外赴任したあとで、現地に定着し、成果を出すことができるのか?
   
 を海外赴任前ー海外赴任後に縦断で探究するプロジェクトです。
   
 いまからちょうど4年前、2012年にプロジェクトが立ち上がり、今年、ようやく成果が生まれる予定です。
   
 海外赴任者を対象とした縦断研究であり、かつ、海外赴任者だけでなく、現地の上長を巻き込む調査であったため、思ったよりも時間がかかりました。
 成果物は、秋以降、社会にお目見えする予定です。
  
  ▼
  
 先だって行われました教材開発(ビデオ撮影)は、海外でご活躍なさってきたビジネスパーソンの方々に、中原が、その経験談を伺うことを目的としていました。
  
 こちらのビデオには、長きにわたり、JALで海外事業にたずさわってこられ、JALウィーン営業支店長兼JALPAK オーストリア支店長を歴任された板谷和代さん。
  
 そして、アクセンチュア株式会社、HOYA株式会社・グローバルCIOとして、グローバルに仕事をなさってきた近安理夫さんに、ご登場いただきました。お二人ともお忙しい中、プロジェクトにご参加いただき、ありがとうございました。心より感謝いたします。
   
  ▼
  
 ビデオの撮影中、お二人からは、貴重な経験談を伺いましたが、やはり真っ先に思ったことは、
  
 海外の仕事では「言葉を尽くさなければならない!」
  
 この一言につきます。アタリマエダのクラッカーだけど、本当にそのことを痛感します。海外赴任者の定着、成果においては、このことが非常に大きな影響力をもっている。

 すなわち、異文化環境における仕事は、いわば「前提や当然のすれ違い」である。
 相手の思っている前提や当然は、こちらのもっている前提やアタリマエとは微妙に異なっていたり、全くの逆であったりする。それらを放置したまま仕事を進めて行ってしまっては、必ずブレークダウンする。
  
 なので、こちらとしてはアタリマエだと思っていることであっても、
  
 言葉を尽くして、意味を重ねて、納得をつくりだしていかなければならない。
     
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 ともすれば、そうした面倒な作業は、一般の日本人からすれば、不要なものに見えるかもしれない。
  
 一般の日本人からすると
  
 「面倒くさくて、かったるいこと」  
  
 のように思える。
   
 「何をいまさら水臭い。アタリマエじゃないか」
  
 と思ってしまうこともある。
  
 思わず、
    
 「背中をみろ、空気をよめ」
  
 と言いたくなることもでてくるかもしれない。
  
 しかし、英語のスキルやら発音やら、そういうこと以前に、そうした
  
「言葉を尽くすことを面倒だと思ってしまうマインドセット」
  
 を変えなくてはならない。
  
 お二人の経験談を伺いながら、そのことを心の底から痛感しました。

  ▼
   
 近安さんは、ご自身の経験談として、こんなことをお話になっておられました(ICレコーダをもっていなかったので一字一句同じではありません)。
  
 あるとき、あるプロジェクトのミーティングに遅刻してきたメンバーがいた。
  
 思わず
  
 「ミーティングでは、はやく席につきなさい」
  
 と言ったら、文字通り、彼は「素早く、あわてて、一目散に、席についてくれた」。
 自分が言いたかったのは、ミーティングでは「ミーティングでは、議事がはじまる前に、席についていなさい(=早めに)」ということだった。
    
 しかし、かの国では、「ミーティングの前に、全員が集合し、開始時間からはじめる」という文化は、そもそも、なかった。そこから前提をあわせる作業がはじまった。
  
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 板谷さんは、このような趣旨のご発言をなさっていました。
  
 赴任直後、仕事中に、私語があったり、ものを食べたり、飲んだりするケースが見受けられた。
 
 日本の基準では考えられないことが、今、目の前で、赴任直後の支店長の前で起こっている。ここで、どうするか。
  
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 こういうことなのです。
 言葉を尽くさなければならない、ということは。
 ひとつひとつ納得をつくっていかなければならない、ということは。

  ▼
  
 2012年にはじまった本調査には20社を超える企業の方々、海外赴任者、その現地の上長の方々に御協力をたまわりました。この場を借りて御礼を申し上げます。
  
 また、4年にわたるプロジェクトに伴走いただいた同社の永田正樹さん、横川明子さん、東園治さんにも心より感謝をいたします。ありがとうございました。教材開発には、信頼できるディレクターの大房潤一(株式会社光学姉妹)さんに御協力いただきました。ありがとうございました!
  
 調査の模様は、HRサミット2016 10月4日 16:25-17:30にご報告させていただく予定です。どうぞこちらの方もよろしく御願いいたします。
  
日本企業におけるグローバル人材育成:大手20社の調査からみえた成功のポイント
HRサミット2016 10月4日 16:25-17:30
http://www.hrpro.co.jp/hrsummit/2016/session.php?smcd=46&scd=2837
  
 そして人生はつづく

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