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2023.6.6 08:58/ Jun

リーダーシップを生み出すためには「武器を持ち変えること」が必要である!?

「うちの管理職に、ほにゃららリーダーシップについて、教えてもらえませんか?」
   
「最新のリーダーシップ理論について、教えてもらえませんか?」
   
  ・
  ・
  ・
   
 わたしのような仕事をしておりますと、たまに、企業の経営者の方、ないしは、人事担当者の方から、このようなご依頼をいただくことがあります。
(昨年体調を崩したことと、現在あまりに多忙なことから、特別な事情がない限り、管理職研修は、今、お引き受けしておりません)
  
 こうしたとき、わたしは、
  
 ひとつの企業において、たったひとつのリーダーシップ理論を普及させること
  
 や
  
 最新のリーダーシップ理論だから、御利益があるに違いない
   
 という考え方に、個人的にはあまり共感できないため(まったくダメとは言わないが、功罪がある)、これまでほとんどのケースで、これらのニーズに対してお答えしてきませんでした。
    
  ▼
   
 その背景にありますのは、
   
 管理職にとって必要なリーダーシップのあり方は、1)部下の状況、2)本人のキャラ、3)ビジネス環境の3つの影響を受けて、その現場、その現場によって変わってくることが容易に予想される
(ちなみに、リーダーシップとは、「職場・チームの目標達成をめざして、チームメンバー同士が相互に影響力を与え合うような現象」と考えます)
   
 からです。
   
 具体的には、
    
 部下のスキル成熟度が低いのにもかかわらず、部下に「君は何をしたい?」と「謎かけコーチング」的なリーダーシップ発揮をしても、意味がありません。
   
 また
    
 管理職本人のキャラが内向的・内省的キャラなのに、織田信長のような革新的!?リーダーシップを求めても、ギャップがありすぎて、無理がたたって、道理がひっこむだけです。「課長、なんか、ひとが変わりましたよね。なんか、悪いもの食べました?」という状況が生まれます。
   
 まして
   
 ビジネス環境が「ただちに出血を抑えければならない」ような「緊急局面」にあるのに、「部下のボトムアップからの意見を吸い出すようなリーダーシップ行動」をとっても、気づいた頃には出血多量で死んでいるかも知れません。
   
  ・
  ・
  ・
   
 要するに、わたしが言いたいことは
    
 リーダーシップは「武器を持ちかえること」だということです。
         
 自分自身が、どのくらいの腕力や資質をもち
 仲間には、どんな仲間がいて
 敵が、どんな敵かによって
  
 持たなければならない「武器」は変わる、ということになります。
  
 別の言葉でいうと、
  
 必要な武器は「たくさん」もっておいて、そのたびごとに「選んで使った」方がいい
  
 ということになります。そして、たとえ「最新の武器」であっても、相手が悪ければ、効かないこともある。最新のリーダーシップ理論だから「御利益が高い」と考えることは、香ばしさが漂います。
  
  ▼
  
 このことについて、せんだって、パーソル総合研究所の主催で6年間開講されている「HRリーダーズフォーラム」という次世代人事リーダー塾で(中原も監修者を仰せつかっています)、本間浩輔さん(元・Yahoo人事責任者)とご一緒させていただく機会を得ました。
  

HRリーダーズフォーラム
https://rc.persol-group.co.jp/hrlf/
   
(各社人事リーダーの皆様、パーソルグループの皆様、とりわけう運営に携わっておられる村山さん、原さん、田原さん、またパーソル総研・萱野社長、お疲れ様でした。濃い一日でした。これから半年間皆様の学びに伴走させていただけることを嬉しく思っています)
  
 その際、本間さんは
  
 リーダーシップは「発揮するもの」ではなく「演じるもの」だ!
  
 とおっしゃっていました。わたしは、まさにその通りだな、と思いました。
  
 要するに、部下・環境に応じて、必要なリーダーシップは「選び取り」「演じること」が重要なのだと思います。
  
 別の言葉でいえば
  
 リーダーシップは「使い分け」
    
 です。
   
 そして、そういうことになると、管理職としては「ひとつのリーダーシップのあり方」に固執するのではなく、「いくつかのリーダーシップスタイルを身につけておく」ということになるのかな、と思います。
  
 そして、もし仮にそうであるならば、リーダーシップは「一朝一夕」の「単発講演・イベント」で身につくものではなく、中長期の「管理職の行動変容過程」につきあっていく「プロセス」である
  
 ということになるのだと思います。
  
 リーダーシップ開発の道のりは「長い」のです
  
  ▼
  
 今日はリーダーシップについて、お話をさせていただきました。達成したい目的、今置かれている状況によって、必要なリーダーシップは変わるのではないか、という問題提起をさせていただきました。
   
 逆にいうと、「たったひとつの武器」しか、もっておらず、それに頼った「一本足打法」で、敵を倒そうとしても、ヘタをすれば「スライム」みたいな敵にも負けちゃうかもしれない
   

  
 ということもいえるのかなと思います。
  
  ・
  ・
  ・
  
 あなたには、今、どんなリーダーシップが必要ですか?
 あなたは、今、どんなリーダーシップを「演じて」いますか?
  
 そして
  
 あなたは、いくつの種類の「リーダーシップ」を持っていますか?
  
 そして人生はつづく
      
 ーーー
   
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チームワーキング座談会
https://www.jmam.co.jp/hrm/training/special/teamworking/case/index.html 
  
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https://xn--diamond-kc4f0b9lnf.jp/articles/-/316499

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職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS」 (パーソル総合研究所・中原の共同開発) 
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上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス(上司用)
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中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
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