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2023.4.10 11:43/ Jun

「名人芸」はそもそも「継承」なんてできるのか?

 名人芸はいかに「継承」されるのか?
  
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  ・
  
 研修業界、ワークショップ業界、組織開発業界・・・「はて、そんな業界があったんかいの?」とツッコミが入りそうなことは、軽やかにスルーさせていただきつつ(笑)・・・この業界!?に20年以上も身をおいている僕が、気になっていることのひとつに、冒頭の問いがあります。
  
 それは
  
 研修業界、ワークショップ業界、組織開発業界のファシリテータや講師の方々のなかには、もはや「名人芸」とかしいいようのない「技」、そのひとにしかできない「匠のスキル」のようなものをお持ちの方がいらっしゃいます。
 
 が、そうした方々が年齢を重ね、なかには鬼籍に入られる方もいるなかで、それらを「いかに継承」するか、ということが、本当に喫緊の課題だよな
   
 ということです。人生100年時代とは言うけどね・・・だんだんと失われる危機感を感じます。
  
 この問い、すごく単純にいうと、
   
 名人芸は、いかに「継承」されるのか?
  
 ということになりますね。
  
  ▼
  
 実は、先ほどの問いには、これに付随する、いろいろな問いが生まれます。
  
 たとえば、
  
 名人芸はそもそも「継承」できるのか?
   
 という問いです。
  
 まぁ、そうですよね。
   
 だって名人芸が「名人」にしかできない「(稀少性の高い)技・スキル」であるならば、「名人ではないひとに継承できる」ということを「想定」すること自体が、おこがましい、論理矛盾である
  
 ともいえます。
  
 また
  
 名人芸は、そもそも「継承するべき」なのか?
 新たな時代にあった「芸」を、あとの世代が築いていく方が賢明なのではないか

  
 という問いや問題提起も生まれます。ま、それもそうです。古い時代の技やスキルを、右から左に「コピペ」するようにして継承される名人芸は、今の時代に本当に適合的なのか、ということもありえます。
   
 どちらも「ど正論」、間違っているというわけではまったくありません。
  
 答えは「風の中」。
 皆さんはどう思われますか?
  
  ▼
  
 今日は、名人芸について書きました。
  
 かつてユトレヒト大学名誉教授のフレット・コルトハーヘンさんは「教えるひとにとっての不都合な真実」という指摘を行っています(坂田哲人、中田正弘、村井尚子、矢野博之、山辺恵理子 著、学文社、2019年「リフレクション入門」のなかにございます)。
    
 ここで「不都合な真実」とは、実践者が
    
1.まったく同じようにみえる実践を行っても、「同じ結果」が得られないことが多々あるということ
   
 であり
   
2.その「効果の違い」は実践者の「あり方(being)」が関係している
    
 ということなのかな、と解釈します。
     
 実践の善し悪しは、実践者の「技術」とか「スキル」とか「内容的知識」が多い、少ない、ということよりは、「実践者のあり方」≒「存在(being)の仕方」が実は、効果に影響を与えていることなのかな、と思います。「何を学ぶのか(What)」も大切だけど、「誰から学ぶのか(From whom)」は、学びの質に大きな影響を与えます。
    
 これを敷衍して考えると、名人芸には、おそらく、そのひとのもっているスキルや技だけではなく、「名人のあり方(being)」も多分に影響しているような気がします。
  
 そう考えると「継承できる」と考えること自体が、おこがましいという話になってしまうわけですが。
   
 まことに悩ましい
 でも、名人芸の喪失は、社会的損失だよな。
  
 もうすこし考えてみます。
 さて・・・執筆に戻りますね。
  
 そして人生はつづく
      
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