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2023.2.10 08:44/ Jun

ビジネスの現場には「伝えたはずだけど、伝わっていない」が蔓延る理由をさぐりたい!?

 ビジネスの現場には「伝えたはずだけど、伝わっていない」が蔓延る理由をさぐりたい!?
    
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 リーダーが声をあららげ、職場の目標を、メンバーに落とし込んでいるのに、メンバーには、伝わらない
    
 トップが、何度も、会社の方針をメンバーに話しているのに、メンバーはどこかピンと来ていない
    
 校長が、めざす学校像を、教員に話しているのに、教員は上の空である
    
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 わたしたちの社会には、このような「伝わらない」現象が、ここ、かしこで見受けられます。
 わたしも、かつて、部門のリードしていたことがあるので、そのときの気持ちはよくわかります。
      
 伝わらないことに、やきもきする。
 やきもきして、焦る。
 やきもきして、焦って、声を荒らげるから、
 さらに「伝わらない」
     
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 この状況は、さしずめ、
   
「伝わらない」というよりも「手放されている」
  
 という方に近いかもしれません(泣)。
   
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 最近、わたしが思っているのは、この「問題の根本的な解決」に資する基礎的な研究を、数年かけておこなう必要があるのではないか、ということです。
    
 おそらく「コミュニケーションとは何か?というにまつわる常識」を解体し、人材開発・組織開発の領域に、ないしは、リーダー・管理職の学習内容のひとつに「新たなコミュニケーションのモデルを再インストールする」必要があるような気がしているのです。それには中長期の時間がかかるでしょう。
   
 もちろん短期的には「対処療法的解決」もありえます。
  
 たとえば、先ほどの例でいえば、
   
 1.同じ事を、違う言葉で、何度も、連呼しましょう
   
 とか
  
 2.忘れた頃にリマインドしましょう
   
 といったものです。ほぼTipsですね。
 もちろん、それもやらないよりは、やったほうがいいに決まっています。
   
 しかし、おそらく、それでは根本的な解決にはならない。
 コミュニケーションをどう見るか、ということに関する理論的な考察が必要です。
   
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 一般に社会で広く支持を受けているコミュニケ−ションモデルは、おそらく、シャン・ウィーバーの情報通信モデルでしょう。
   
 
 
 情報通信モデルにおいては、
  
1.情報の送り手が「伝えたい情報」を「信号」にする
  
2.信号が「情報の受け手」に伝わる
  
3.情報の受け手が「信号」を「情報」へと「復元」する
  
4.情報の受け手は「伝えたい情報」を受け取る
   
 実際のコミュニケーションは、次の機会には「情報の受け手」と「情報の送り手」が反転して、1から4のプロセスを繰り返すことになります。このモデルは、ビジネス界にも、教育界にも、蔓延っている。
   
 しかし、このメタファのうち「片側」のイメージだけが先行すると、「一方向的なやりとり、こそ、情報を伝えること」ということになってしまいます。それがリーダーや管理職のなかにインストールされている。
 リーダーや管理職は、こうした考え方や物の見方を、無意識のうちに、非意図的にインストールされ、実現してしまう。そして、こうした情報のやりとりこそが、リーダーのやるべきことだ、と考えてしまっているひとも少なくないのかな、と思うのです。
   
 それが、ビジネスの現場には「伝えたはずだけど、伝わっていない」が蔓延る理由につながっている気がします。
  
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 いまだ答えはでていないのですが、少し、この問題と理論的な格闘をしてみたいと思っています。何年かかるかはわからないですが、最近は、オースティン・サール・グライスなどの言語行為理論、言語哲学、会話分析の本を、隙間時間を見つけて、渉猟しています。ま、これがヒントになるかはわからないのだけれども。
   
 そして人生はつづく
       
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