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2023.1.30 08:36/ Jun

「授業」と「企業研修」は「別物」である!? : 久しぶりの授業観察を通して私自身が感じたこと!?

 子どもは授業中、自分のなかで「つぶやいている」!?
   
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 先だって、ご縁がございまして、ある小学校の公開授業に参加させていただく機会を得ました。
  
 公開授業等は、多忙につき、ふだんはすべてご遠慮させていただいています。
 今回は、その学校に過去10年以上にわたり、お世話になってきた校長先生が2名も、いらっしゃるとのことでお引き受けしました。その日は、公開授業後に、討論会も開催されました。いろいろお話しさせていただきましたが、お役に立てていたとしたら、幸いです。
  
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 公開授業では1年生から5年生までの教室を拝見させていただきました。仕事柄、わたしは、企業研修は多数拝見する機会があるのですが、子どもを対象にした授業の参観は、そう多くはありません(たまに、息子の授業参観に行くくらいです)。
  
 久しぶりにメモ帳をもって、授業を拝見させていただきました(授業を公開してくださった先生方には、心より感謝をいたします。ありがとうございました。)。
 とりわけ「子ども」の様子を観察させていただきました。
  
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 授業を見学させていただいて、いくつか気づいたことがありました。いつも見ている企業研修との比較になってしまうのですが、「授業」と「企業研修」は、やはり「別物」だと思いました。似ているように、見えますが、両社は別物。そのことを、改めて再発見しました。
   
(だから、子ども向けの授業ができるからといって、大人相手の研修は、トレーニングなしでは難しい、ということです)
(そして、大人向けの研修・プレゼンテーションができるからといって、子ども向けの授業を行うのは、トレーニングなしでは難しいということです)
  
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 気がついたことのひとつめ。
  
 それは、「子どもは、授業中、ぶつぶつ、ひそかに、つぶやいている」ということです(笑)。とりわけ低学年から中学年。その子、その子に、よって理解は異なり、つまづきも異なる。
 よって、教室が、まったくの無音になることはあまり多くはなく、誰かのつぶやきが、時折聞こえるような機会が多々ありました。教室が「そよそよ」としている感じ、という感じでしょうか。
   
 誤解を避けるために申し上げますが、私自身が「静かな無音がベストだ」と思っているわけでは断じてありません。そうではなく、彼らは、ひそかに、先生の授業を聞いたり、ipadを見たりしながら、自分の脳裏に思い浮かんだことを、静かにしゃべっているということです。
  
 こうした状態は、企業研修ではあまり起こりません。
   
 企業研修では、「無音のときは無音」反対に「議論するときは議論」という風に、境界が明確です。
 逆にいうと、企業研修は、コントロール(権力)がきいている場ということになるでしょうし、研修講師が、それだけ権力を行使している、ということです。受講生の方もわかっていて「講師のコントロールにあわせて、自己を調整している」ということになるのだと思います。
   
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 ふたつめ。
 それは「昨今の授業は、子どもの注意が、どこに向かうかを把握するのは難しいなぁ・・・」ということです。
 これは昔の授業との比較になってしまうのですが、かつての授業は、子どもの注意が「黒板・先生」か「自分のノート」くらいのどちらかに向かうよう、先生は、コントロールすればよかったのだと思います。
   
 しかし、昨今の授業は「モノ」が多いのです。
 黒板があり、実物投影機(モニタ)があり、ワークシートがあり、ipadがあり、ipadのなかにはたくさんのアプリがあります。要するに、子どもの注意が向かう場所が多様化している。
(誤解を避けるために申し上げますが、注意が向かう場所が多様化していることがダメだと言っているわけではありません)
   
 逆にいうと、先生が、それをコントロールするのかしないのか、をまずは決めなければならない。
  
 もし、コントロールしないのなら、
  
「子どもひとりひとりに、今、何をしなければならないのか?」
  
 を考えさせなければならない、ということになります。
  
 昨今の教育業界では「個別最適な学びが大事」ともいいます。個別最適な学びとは、おそらく、「子ども一人が、自分の進度・理解に応じて、自分にとって最もフィットする方法で、異なるやり方で学ぶ」ということでしょう。これをどのように実現しつつ、教育目的に到達させるのか。
   
 正直、難しい! トレーニングや十分な準備なしでは、まぢ・無理ゲーじゃね、と思いました。
 これを提唱するのなら、かなりのトレーニングを必要とするでしょう。私自身も学びたいので、わたしの目の前で、実践してみていただきたいな、とも思いました。
   
 そのくらい、教師がコントロールを手放しつつ、しかしながら、誰一人として取りこぼさず教育目的に到達させるのは、トレーニングや経験学習が必要ではないか、と思います。
  
(ちなみに、これは企業研修では、あまり起こりません。なぜなら、研修講師が、今、何をしなければならないのか、を明確にコントロールしていくからです)
   
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 みっつめ。
   
 マスクの問題もあり、発表や発言の際に、
   
「自分の声をどこまで届かせるか?」
  
 について、それぞれの子どもが、どのくらい意識しているのかが気になりました。
  
 明らかに「このひとの声は、他の子どもに届いていないだろうな」と思うケースもございましたし、「あれ、なんで、こんなに大きな声なんだろう」と思うケースもございました。
   
 これは、マスクの問題や、コロナ禍で失われた身体性の問題もあるのでしょう。そして、これは子どもだけの問題ではなく、わたしたち大人にもおきていることのように思います。
  
 たとえば、大学生などの会話を見ておりますと、たまに思うこともあります。「この声量で、マスク越しの会話だと、お互いの声は、届いていないだろうな」とわたしから見えていつつも、「何となく、話をあわせて、大学生同士が会話が進行させている」ケースもございます。
  
 声を、どこまで、届かせるのか
   
 難しい課題だな、と思いました。
  
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 さて、以上が、授業観察日記でした。
 しょーもないことばかりが気になって本当に申し訳なく思うのですが、僕は短い時間、そんなことを考えながら、授業を見学させていただきました。
    
 最後になりますが、日々忙しいなか、授業を公開してくださった先生方、今回の場をつくってくださった2名の校長先生に感謝いたします。これまでに引き続き、学校が躍進していくことを願っております。
  
 そして人生はつづく
      
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