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2022.10.3 08:19/ Jun

インタビューのやり方を「どのように教えたらいいのか」?:年表、法廷尋問、見習いという3つのメタファ

「インタビューを教えること」は難しい!?
   
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 せんだって大学院・中原ゼミ(博士課程ゼミ)で「Making Interviews Meaningful(インタビューを意味あるものにするために)」と題された論文を、みなで購読しました(Langley and Meziani 2020 in Journal of applied behavioral science)。
  
 この論文では、インタビューをよりよくするための方法、その考え方について、著者らがレビューをしてくれています。
  
 人文社会科学の研究では、インタビューが研究手法として頻繁に用いられますので、とても勉強になりました。報告してくださった、大学院博士課程2年の東南裕美さんには、心より感謝いたします。
    
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 論文中、個人的に印象的だったのは、インタビューをどのように行うか、ということに関して、
  
 1)イベントトラッキング(年表づくり)
 2)法定尋問
 3)見習い
   
 という、3つのメタファが述べられていたことです。今日はこれをご紹介しましょう。
   
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 まず、1)イベントトラッキング(年表づくり)とは、
    
 インタビューイが経験した出来事を、時系列に従いながら、聞き出し、あたかも「年表」をつくるようなインタビュー手法
   
 です。イベント(出来事)をトラッキング(追跡する)して年表をつくるのですから、おおよそのイメージがつくかと思います。
   
 この手法では、出来事を、本人がどのように「経験した」のかを、聞き出していくので、この手法で取り出される内容は「経験ー知覚(本人の意識)」のセットになるのだと思います。もっとも基本的であり、もっとも頻繁に用いられる手法なのかな、と思います。
  
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 次に、2)法廷尋問とは、たとえば、
  
 ・誰が
 ・いつ
 ・何をしたのか?
     
 を、あたかも「法廷で尋問を行う検察官」のごとく、客観的に聞き出していくインタビュー手法です。
  
 1)と似ているような気がしますが、ここで中心になるのは「事実(ファクト)」を聞き出すところでしょう。本人の主観というよりは、事実の羅列が、インタビューの成果になるのだと思います。
   
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 3)の「見習い」とは、本人が暗黙知になっている技能などを「可視化」する手法です。
 インタビューを行うひとが「見習い(何も知らない弟子)」のような存在となることで、インタビュイーから学ぶがごとく、その技能の神髄を、聞き取ることがめざされているのだと思います。
     
 具体的には、3-1)Think aloud法や、3-2)クリティカルインシデントテクニック、3-3)相方(ダブル)への教示(インタビュー)などがあげられていました。
   
3-1)Think aloud法:技能をもつひとに、ある作業に取り組んでもらうで、感じたことをそのまま口に出して話してもらう方法
   
3-2)クリティカルインシデントテクニック:ハイパフォーマンスにつながる「一番重要な場面(クリティカルインシデント)」を特定し、その周辺の本人の行動や知覚を聞き取る手法
   
3-3)相方(ダブル)への教示(インタビュー):翌日から自分の代わりに仕事をする相方(ダブル)がいたとしてがいたとしたら、そのひとに、インタビュイーがどのような指示をするのかを聞き取ること
     
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 論文のなかでは、これらの他にも、様々な手法や考え方が述べられていたのですが、特にこの3つに関しては、個人的に、示唆に富むところが多かったように感じます。
      
 実は、僕自身、ここ数年、悩んでいたこと(モヤモヤしていたこと)のひとつに、
      
 学部生や大学院生に、インタビューの極意をどのように教えるのか?
       
 という問題がありました。実は「インタビューを教えること」は難しいのです。
      
 究極を言うならば、「インタビューを教えるため」には、僕自身がインタビューをしているところを観察学習してもらったり、実際に、本人にインタビューをしてもらってリフレクションしてもらうことが、最もパワフルなのだとも思います。しかし、それらの手法は、非常に時間がかかり、おいそれとできることではありません。
       
 よって、何らのかたちで、学生に「インタビューのイメージ」をもつためのメタファがないものか、と思っていました。出来事追跡、法廷尋問、見習い。この論文から、少しヒントをいただけたような気がします。
    
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 今日はインタビューについて書きました。
    
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 そして人生はつづく
       
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