NAKAHARA-LAB.net

2022.4.6 08:07/ Jun

あなたの会社では、新卒採用で「やる気がない学生」を「積極採用」してますか?

「うちの社員は、どうも、やる気がなくて、言われたことしかやらないんですよね。何か、やる気を取り戻す方法はないですかね?」
     
「いやー、うちの従業員は、すっかり疲弊して、自分で動こうとしないですね。どうしたらいいんでしょうか?」
   
 ・
 ・
 ・
   
 仕事柄、企業・組織の「ひとの課題」についてご相談を受けることが多いのですが、1年に10回ほど、持ち込まれる相談が、こちらです。
  
 うちの社員、やる気ゼロ問題
 うちの従業員、自分で動く気ゼロ問題
  
 ですね。
  
 お困りのようなので、とにかくお話を伺い、かつ、「ともに対策は考える」のですが、こうした台詞のあとに、まず、僕がおたずねすることは、下記の問いです。
  
「御社では、新卒採用のときに、やる気がない学生、自分で動こうとしない学生を、積極的に採用しているのですか?」
   
 ・
 ・
 ・
  
 たいていの場合は「えっ」と一瞬驚かれた様子を見せますが、すぐに意味を会得なさるようです。
  
「そうですよね・・・新入社員のときは、あんなにやる気があったのに、2年くらい職場で仕事をしていると、死んだ魚の目のようになってしまうんですよね」
  
「そうなんですよね。3年もいればいっちょあがりなんですよね。やらされ感が漂いはじめて、自分からは仕事をしなくなってしまう」
  
 ・
 ・
 ・
   
 そうなんです。
  
 この手の問題は、たいてい「入社後」に要因があることが多いのです(採用時の問題がゼロとは言えない)。
  
 つまり、ここから導き出される結論は、
  
「やる気がない」状態は、入社後に「学習された結果」である
「自分から動かない」状態は、入社後に「学習された結果」である
  
 ということです
  
 さらに踏み込んで言えば、その状態は「彼 / 彼女にとって合理的に選択された結果であること」が多いものです。
   
 そういう組織では、入社後、新入社員たちは、よかれと思ってやったことで、たくさんの不利益を経験してしまったのでしょう。
  
 やる気をだして指示されていないことをやったら、「余計なことすんな!わたしたちも、それをデフォルトでやらなきゃならなくなるでしょ」と言われた(泣)
  
 自ら動いて、少し調べてみたら、「新入社員のうちは、言われたことだけやればいいんだ。そういうのは、自分のケツを自分でふけるようになってからやれ」と煙たがられた(泣)。
    
 こんな妄想なら3秒で出てきます。そういうことが1年、2年と、度重なる。そうなってくると、「負の学習」が少しずつ進行していくのです。
    
この組織は、言われたことだけやってたほうが「得だ」。「やる気がない状態」でいたほうが自分にとって危害はないし、それによって、何も周囲は変わらない。かえって「やる気がある状態」でいたほうが、自分は損するし、傷つきもする。
  
 だからこそ「やる気がない状態」を合理的に学ぶのです。これを「学習性無気力」といいます。
 それでは「自分から動かない状態」はどうでしょうか。こちらだって同じことです。
  
この組織では「貝」みたいに動かないでいても、給料が振り込まれ、誰からも何も言われない。「自分から動かない状態」でいたほうが、安心・安全に生きることができる。かえって自分から動けば、自分も傷つくし、相手にも煙たがられる。
  
よって「自分から動かない状態」は「合理的」に選択され、学び取られてしまうのです。
  
 ・
 ・
 ・
  
 多くの場合、こうした問題は、上司のマネジメント問題、職場の風土問題に起因することが少なくありません。だって「採用時」にあえて「やる気のない学生」や「やらされ感漂っている学生」を積極採用していないのなら、それは後天的に学習されるほかはないですよね。そして、学習の舞台は、「本人が半径3メートルで生活する場=職場」ということになります。
  
 ▼
  
 今日は「やる気」などが後天的に、かつ、合理的に学ばれてしまうよ、というお話をしました。
   
 あなたの会社では、新卒採用のときに、やる気がない学生、自分で動こうとしない学生を、積極採用してますか?
  
 そして人生はつづく
  
 ーーー
         
武蔵野大学・島田徳子先生、ダイヤモンド社の皆さん(広瀬一輝さん、永田正樹さん)との数年にわたる共同研究と、NPO法人日本ブラインドサッカー協会との連携で、スマホで手軽に受検できる「アンコンシャスバイアス測定テスト」と、内製化研修(プレゼンキット)を開発しました!。この問題は、学術的な背景などは、わたしどもが、テスト結果に基づき動画像(ビデオ)で解説させていただきます。ご利用くださいませ! ご自身の組織にもっともフィットしたアンコンシャスバイアス研修をつくることができます。どうぞご利用くださいませ!
    
ダイヤモンド社共同開発「アンコンシャスバイアス研修」内製化ツールキット    
https://jinzai.diamond.ne.jp/items/k00HD0028/
 
ダイヤモンド社が「アンコンシャスバイアス研修」を開発
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000045710.html
    

    
 ーーー
           
新刊「チームワーキング」がオンライン管理職研修になりました。JMAMさんからのリリースです(共同開発をさせていただいた同社の堀尾さん、ありがとうございました。中原は共著者の田中聡さんと監修をつとめさせていただきました)。どうぞご笑覧ください! 
      
リリースしました!「チームワーキング研修版」
https://www.jmam.co.jp/hrm/training/special/teamworking/
     
 書籍「チームワーキング」おかげさまで「重版」を重ねております。応援いただいた皆様に心より感謝いたします。
     
    
 
https://amzn.to/3esCOrW
            
すべてのリーダー、管理職にチームを動かすスキルを!
ニッポンのチームをアップデートせよ!           
       
 ーーー
    
 職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS(オーディ・アトラス)」が多くの職場で使われはじめています。サーベイはもとより、それをいかに「フィードバック」するかに焦点をあてたツールです。ワークショップも開発しております。どうぞご笑覧くださいませ!
   

職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS」 (パーソル総合研究所・中原の共同開発) 
https://rc.persol-group.co.jp/consulting/survey/service/od-atlas.html
   
  ーーー
       
【好評発売中】1on1のコツをまとめた映像教材を、中原とPHPさんで共同開発しました。上司用、部下用あります。1on1について「同じイメージ」をもつことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
     
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス(上司用)
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
  
経験を成長につなげる1on1(部下用)
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061   
  
  ーーー
   
【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます! 
     
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
   
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q    
  
 ーーー

新刊「フィードバック入門:耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」絶賛発売中、13刷重版出来です!。AMAZON総合13位、1位(マネジメント・人材管理カテゴリー、リーダーシップカテゴリー)を記録!年上の部下、若手のトンガリボーイ、トンガリガール。職場には、多様な人々が集っています。難易度の高い部下育成に悩む管理職向けの新書です。どうぞご笑覧くださいませ。スピンアウト企画にDVD教材「フィードバック入門」、研修、通信教育もあります。こちらもどうぞご笑覧ください。
     

   
『フィードバック入門』スピンアウト企画
https://www.php.co.jp/seminar/feedback/

 ーーー
  
【泣くな!新米管理職!】
  
おかげさまで10刷重版出来。「駆け出しマネジャーの成長論」は、「実務担当者」から「新任管理職」への役割移行をいかに進めるかを論じた本です。「脱線」をふせぎ、成果をだすためには「7つの課題」への挑戦が必要であることを解説しています!全国の管理職研修で用いられています。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
パーソル総合研究所と中原は、このテキストをもとにした「マネジャーになる研修」を開発しました。種部吉泰さんとディスカッションは、非常に楽しいものでした。このコースについても、どうぞご覧くださいませ!
  
「マネジャーになる」 研修:プレイヤーからマネジャーへの移行期支援プログラム
https://rc.persol-group.co.jp/seminar/become-a-manager.html
   
ーーー
 
        
中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
       
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。1カ月間は無料トライアルだそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
     
強みの自己認知と意欲を高める『ポジティブ1on1』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000059483.html
   
仲間から実際に認められた行動のデータから、自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加されました。職場における相互称賛を、自分の強みの発見と目標設定に役立てられます。
 
自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000059483.html
   
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
    
ピアトラストお問い合わせ
https://www.peer-trust.com/contact/
   
ピアトラストの効果まとめページ
https://www.peer-trust.com/research/2020/
    
 ーーー 
    
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約37000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
   
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.3.29 08:06/ Jun

【参加費無料】リーダー育英塾2024募集開始!:特色ある学校づくり+持続可能な学校づくりを進めたいあなたへ!

ひとを褒める「語彙(ボキャブラリー)」を増やす!?

2024.3.22 08:31/ Jun

ひとを褒める「語彙(ボキャブラリー)」を増やす!?

20代ー30代のビジネスパーソンが陥りやすい「学びの死の谷(デスバレー)」!?

2024.3.21 08:12/ Jun

20代ー30代のビジネスパーソンが陥りやすい「学びの死の谷(デスバレー)」!?

2024.3.19 08:33/ Jun

私たちには見えている「将来の光景(vision)」!?:心ゆくまで知的に暴れてください!

なぜ?(why)と聞くより、How と What を聞け!:学生面談・部下面談をより有意義にするためのコツ!?

2024.3.15 10:38/ Jun

なぜ?(why)と聞くより、How と What を聞け!:学生面談・部下面談をより有意義にするためのコツ!?