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2021.4.28 07:52/ Jun

あなたの周囲では「話し合い無価値ウィルス」が感染拡大していませんか?

4月29日(木)から5月9日(日)までブログの更新を中止します。少し充電します。皆さんもどうかよい休日を! そして人生はつづく!
  
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「話し合いは、好きじゃないです。昔、白い空と青い雲のどちらが好きか、というテーマで、むかし、ディベートさせられたんです。これって、意味ありますか? なんで、こんなテーマで、闘わなきゃならないのか、意味わからない」
  
「話し合ったって、無駄ないじゃないですか。みんな勝手なこといって、結局、声の大きな人が勝って終わるんだから」
  
「えー話し合い・・・めんどくさくないですか。どうせ、多数決するんだから、すぐにやりましょうよ」
  
「話し合ったって、効率悪いだけです。個人がひとりでやった方が早いし、正確です。だから、ひとりでやらせてください」
  
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 大学で勤めておりますと、1年に1度くらいは、こうした声に出会います。
  
 最近は、めっきり少なくなった印象がありますが、15年ほど前は、だいたい半期に1度くらいは、だいたい、こういう反応を1度くらい経験しました。
(僕の授業では、必ず、グループワークや話し合いがありますので・・・)
  
 やれやれ。
  
 しかし、こうした反応を得たからといって、彼らを責めることはできないな、とも思います。
 なぜなら、よくよく話を聞いてみると、彼らは「話し合いがもともと嫌い」だったわけではないからです。
  
 話し合いが、もともと「嫌い」ではないのです。生まれたときから「話し合い」が嫌いな子どもは、なかなか想像できません。
  
 むしろ、「むごい話し合い」を経験しているうちに、「話し合いが嫌いになった」のです。
  
 ある女の子は、涙ながらに、こんな話をしていました。
   
「みんな、話を最後まで聞かないんです。意見をいっても、茶化したり、何も考えずに、いいねいいねで済ましたり。結局、何をしゃべっても、同じなんです。だから、話し合いは面倒くさい」
   
 やれやれ・・トホホ。
    
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 こういう声を聞いていると、僕は、ついつい、教師・大村はまの言葉を思い出します。
  

話し合いは「悪い癖」がついてしまいますと、まず直すことは不可能です。
  
話し合いに対する興味を失い、その重要性を軽蔑するようになってしまいます。
  
話し合いなんて時間つぶしでつまらない。みんな聞いてもきいても黙っていて、何も言わない人がいるとか、愉しく話せないとか、話し合っても、結局は、自分で考えたのと同じだ。
  
話し合いがなくても、結局自分自分でやればいいんだ、とそういうふうになってしまいます。
(大村はま)

  
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「むごい話し合い」ばかり続けていると「話し合うことの無価値」をネガティブに学んでしまいます。そして、いったん、学ばれた「話し合うことの無価値」は、なかなか学習棄却(Unlearning:学び捨てること)はできません。
  
 さらにいうと、おそらくは「話し合うことの無価値」は、授業・クラスのなかで「伝染」するはずです。「むごい話し合い」が、さらに「むごい話し合い」を生み出し、みなが、そこに価値を見いださなくなるまで、そう時間はかからないはずです。
  
「話し合いの無価値」の「感染能力」は変異ウィルス並みにすさまじいですので・・・(泣)。あっという間に、クラスひとつが、「話し合い嫌い」になってしまいます。
  
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 今日は、話し合いについて書きました。
 実は、このテーマは、中原ゼミでは、一度は僕から学生に伝えるテーマです。
   
 大学の授業にもなって「話し合いとは何か?」「対話とは何か?」というテーマを授業で扱わなければならないことには、一瞬、戸惑いもありますが、実際、そうなのだから、仕方がありません。
  
「主体的で対話的で深い学び」だの「アクティブラーニング」だの、言葉ばかりが先行しますが、現場は、ここからです。こういうところから、地道に地道に、地に足をつけてはじめなくてはなりません。
  
 あなたの周囲では「話し合い無価値ウィルス」が感染拡大していませんか?
 それ、マジで感染予防なさってくださいね。いったんかかってしまうと、「特効薬」なんて存在しないので、自己治癒するまで、本当に時間がかかりますので。
     
 そして人生はつづく
   
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【近況】
このたび、文部科学省・中央教育審議会の臨時委員を拝命いたしました。
  
最近、あまりに多忙なので、どうしようかな・・・と一瞬思いましたが「これも社会貢献」+「迷ったらやれ!」と思い直し、お引き受けすることになりました。
   
教員の採用、免許制度、研修・育成制度、働き方、教員養成のあり方に関する特別部会で2年間程度にわたる議論になるようです。下記は、先日の会議のわたしの発言メモです。内容がてんこもりで、発言時間は数分しかないんで大変ですね。

それにしても、教員の採用・育成・研修・教員養成のあり方は「チョモランマ並に高い山」ですね。こんな高い山は、ないな。。。
  
どうして、こうなっちゃったのか・・・。
  
でも、所詮は、ひとの残した結果です。
一歩一歩やっていけば、登れない山はない。
ご高覧くださいませ!
  
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中央教育審議会
「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会
Day1:中原の発言の要点
  
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■教員の採用・育成・養成を考えるうえでは・・・
  
「革新すること・増やすこと」も重要だが「その前」に、
「減らすこと」を先行する、現場にそのメッセージを届ける

  
安心・安全の職場づくりを行うことをまず表明するべき
  
 ・やらされ感、白け感を現場に生み出さない!
  
  ↓(まずは、安心安全の職場をつくる)
  
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2段階での戦略が必要ではないか?
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【レベル1】安心・安全に働ける職場を実現する
心理的安全性を担保する職場を実現する
  
  ・長時間労働の是正
  ・免許更新制度など
  ・研修の効率化
  ・研修のオンライン化などなど
  
 理由1.職場は「採用の最大のメッセージ」
 (回り回って、採用施策にもつながる)
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  横浜市教育委員会・中原淳研究室(2017)
 「教員の働き方や意識に関する質問紙調査」
  
  辻和洋・町支大介編、中原淳監修「教師の働き方入門」
  現在の仕事にやりがいを感じている? 78.2%
  
  これから教員を志す若い人に教員の仕事を
  勧めたいと思う? 66.0% すすめたくない
  
  「選ぶ」のではなく、もはや「選ばれている」ことを
  認識するべき
  
 理由2.学習資源(スラック:学ぶための精神的・
 心理的・物理的資源)がなければ、学べない。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  
  横浜市教育委員会・中原淳研究室(2017)
  「教員の働き方や意識に関する質問紙調査」
  
  辻和洋・町支大介編、中原淳監修「教師の働き方入門」
  
  主体的体的・対話的で深い学び」について
  研究するための時間が十分に確保できている?
  できている教師は14.2%しかいない
  
  新学習指導要領について理解するための時間が
  十分に確保できている?
  できている教師は12.2%しかいない
  
 理由3.教員のwell-beingが
     子どものwell-beingを規定するから

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  well-beingは対人関係職ではとりわけ重要
  
    ▼(ゆえにそれらをまずは先行させたうえで)
  
【レベル2】さらに高いレベルの教育をめざす
 ・個別最適化した学び
 ・アクティブラーニング
 ・ITなど
   
========================================
  
いずれにしても、データに基づきながら、議論を
していくことが重要
  
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 立教大学大学院 経営学研究科 リーダーシップ開発コースでは、経営学を基盤にしながら、人材開発・組織開発・リーダーシップ開発を実践できるアカデミックプラクティショナーを養成しています。別名、「ひとづくり・組織づくりの大学院」です。
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立教大学大学院 経営学研究科 リーダーシップ開発コース
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中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
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「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
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ラーニングエージェンシーさんと中原研究室の共同研究により開発した「女性の視点で見直す人材育成:トランジションサポートプログラム」のご提供がはじまっています。ライフステージに応じて、役割移行を支援する、きめ細かい研修となっています。共同研究の成果は書籍「女性の視点で見直す人材育成」としても刊行されています。
  
女性の視点で見直す研修 トランジション サポート プログラム
https://www.learningagency.co.jp/service/transition/
 

 
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。AMAZONの各カテゴリーで1位記録!(会社経営、マネジメント・人材管理・労働問題)。
長時間労働はなぜ起こるのか? 長時間労働をいかに抑制すればいいのか? 大規模調査から、長時間労働の実態や抑制策を明らかにします。大学・大学院の講義調で語りかけられるように書いてありますので、わかりやすいと思います。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
また残業学プロジェクトのスピンアウトツールである「OD-ATRAS」についても、ご紹介しています。職場の見える化をすすめ、現場マネジャーが職場で対話を生み出すためのTipsやツールが満載です。ご笑覧ください。
    

対話とフィードバックを促進するサーベイを用いたソリューション「OD-ATLAS」の詳細はこちら
https://rc.persol-group.co.jp/learning/od-atlas/
   
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「研修開発ラボ」(ダイヤモンド社)が、フルオンライン化して大幅リニューアルしました。人材開発の「基礎の原理」を学ぶことのできるトレーニングプログラムです。どうぞお越しくださいませ!
    
研修開発ラボ 特別講座「人材育成の原理・原則を学ぶ」
https://jinzai.diamond.ne.jp/seminar/SEMINAR0495/
  
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「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
    

     
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拙著「職場学習論」(東京大学出版会)のカバー・装いが10年ぶりに変わりました(内容は変わっていませんのであしからず!)。ひとは、職場でどのようにして学ぶのか、というテーマを考察しています。どうぞご高欄くださいませ!
    

    

      
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中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
      
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。利用人数20名までは「無料」だそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
    
強みの自己認知と意欲を高める『ポジティブ1on1』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000059483.html
   
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
   
ピアトラストお問い合わせ
https://www.peer-trust.com/contact/
  
ピアトラストの効果まとめページ
https://www.peer-trust.com/research/2020/
   
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