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2020.12.14 08:22/ Jun

コロナ禍によって、あなたの組織では「気配・隙間・祭り」の3つのコミュニケーションが失われていませんか?

 コロナ禍によって、あなたの組織では「気配・隙間・祭り」の3つのコミュニケーションが失われていませんか?
   
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 新型コロナウィルスの感染拡大は、なお、おさまるところを知りません。業種・業態による違いはありますものの、今年1年で、わたしたちの働き方は大きく変わりました。
  
 いわゆる多くの企業で「テレワーク」が導入され、「伝統的なオフィス勤務」とのあいだで何度かの「揺り戻し」を経験しつつも、少しずつ、「落とし所」が見え始めている気がします。
  
 落とし所はさまざまです。「週に3日はオフィス、週に2回のテレワーク」といったところで「落とし所」が見えてきている会社もありますし、会社によっては、「月に1度くらい」しかオフィスにいかないというところもあります。会社によっては「テレワークって聞いたことはあるよね」のような会社もあります。経営・事業によって、テレワークの導入は様々です。
  
 そのようななかで、わたしたちがオフィスで営むコミュニケーションも、大きく変わりつつあります。みなが、同じ時間に、毎日、同じ場所に集まるといったことが失われ、ひとびとの日々のやりとりが変容しつつあります。
  
 僕は、この1年で、大きく下記の3つのコミュニケーションがオフィスから失われている、ように思います。
  
1. 気配のコミュニケーション  
2. 隙間のコミュニケーション
3. 祭りのコミュニケーション
  
 下記では、これら3つについて論じてみましょう。
  
  ▼
  
 1.「気配」のコミュニケーションとは、文字通り、「ひとが、オフィスにいる「他人の気配」を読んだり、他人の行なっている行動を非意図的かつ暗黙に観察しながら感じること」です。ここで重要なことは、コミュニケーションイコール「言葉のやりとり」ではない、ということです。
  
 むしろ、ひとは、暗黙のうちに、自らの存在・行動から、他者に様々なことを伝えています。そうしたものの伝達が、リモートワークでは厳しくなりました。テレワークでは、ひとの「気配」を伝えたり、そこから何かを読む、といったことは極めて厳しくなります。
  
 逆にいうと、ルモートワークでは「言語を用いたコミュニケーション」で、あらゆる事柄を伝えなければならない、ということです。もう、わたしたちは「あうんの呼吸」や「背中をみて育つ」に依存はできない。
   
 おそらく、コロナ後の社会では、「言語」で物事を他者に対してきちんと「伝えられる能力」の重要性が、さらに高まるものと思います。
  
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 2. 「隙間」のコミュニケーションとは、コミュニケーションの「あいま」、仕事の「あいま」、偶然に出会ったとき、など、非意図的なタイミングによって行われるコミュニケーションです。
  
 廊下で偶然出会った時に行われる「中原くん、あの件、なんどけさ、ちょっといい?」といったコミュニケーション。
 クライアントに先輩と商談に出かけた帰り、山手線のなかで行われていた「先輩、さっきの商談なんすけど、なんで、あのお客さん、あんなことをいったんですかね」といったような偶発的タイミングにまかされていたOJT。
  
 そうした、コミュニケーションや仕事の「あいま」に、非意図的に埋め込まれ、偶発的のなかで営まれていたコミュニケーションが、リモートワークでは失われます。
  
 逆に、リモートワークでの会議は、アジェンダを決め、決まったタイミングにはじまり、決まったタイミングに、みなが「退出」ボタンを押します。
   
 そこには「隙間」がない。
 そして「余韻」がないのです。
  
  ▼
  
 そして、もうひとつ、大きく組織から失われたものが3. 「祭り」のコミュニケーションです。
   
 ひとびとが集まる集団、いわゆる「共同体」というものは、原始共同体の時代から、共同体の集合性・凝集性を高めるために、「祭り」を必要としてきました。
   
 ここでいう祭りとは、「みなが、作り手でもあり、参加者のひとり」でもあるような「非日常的な祝祭のコミュニケーション」です。おもに「ともに飲むこと」や「ともに食事をすること」といったものと組み合わされ、ひとびとは、日々の「ケガレ」を落とし、「気枯れ」になってしまった自己、集団をふるい起こしてきたのです。
  
 今年は、ウィルスの感染拡大により、みなで飲み行く、みなで食べにいくといった、「祭り」が極力抑えられています。職場や気のおけない人々のあいだの「飲食」は失われ、ひとびとは非日常のなかで祝祭の雰囲気を感じることもできなくなりました。
  
 ひとびとは、少しずつ「気枯れ」を感じつつあります。
 それが少しずつ積み重なっています。
   
  ▼
    
 今日は、コロナ禍で失われたコミュニケーションのスタイルとして「気配・隙間・祭り」という3つのコミュニケーションを論じました。ここでもっとも重要なことは、このコミュニケーション喪失の状態がいつまでつづくのか、ということです。
   
 これはまったく個人的な見解でしかないので、読者の皆様は、それぞれごとにお考えいただきたいのですが、わたしは、下記のような見通しをもっています。
  
1. 残念ですが、少なくとも2022年春までは、現在に似た状態が続きうる。ないしは、一時的にコロナ禍は後退するが、忘れた頃に「再燃」することを繰り返す。焚き火の「残り火」のように、コロナ禍は、数年にわたってつづく
   
2. 2022年の春まで、あと1年にわたって、わたしたちが現在の生活を行っていれば、そこで、ひとは新しい働き方を「学習」しつづけることになる。しだいに生産性があがる組織もでてくる。
      
3.コロナ禍が仮にまったくなくなったとしても、2で学習された「新たな働き方」は、そう簡単には学習棄却はできない。
    
 よって、おそらく、
  
・「気配・隙間・祭り」の3つのコミュニケーションを補完するのか
・「気配・隙間・祭り」の3つのコミュニケーションに変わる「新たなコミュニケーション機会」を創出するのか
  
 そのどちらかが求められるようになるのではないか、とおもいます。
  
 コロナ禍によって、あなたの組織では「気配・隙間・祭り」の3つのコミュニケーションが失われていませんか?
  
 そして人生はつづく
  
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