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2019.11.6 06:48/ Jun

あなたのまわりには「自己目的化した薄っぺらなダメだし振り返り」が蔓延していませんか?

 昨今の教育現場・人材開発の現場におりますと、頻繁に出くわすのが「ふりかえり」です。
 おそらく、僕自身は、年間で10万回くらいは(大げさ!)、学生や受講生の行う「ふりかえり(reflection)」を目にしているのではないか、と思います。
  
 現代の教育現場・人材開発の現場では、「ふりかえり」は、「もはやアタリマエ化している学習行動」のひとつです。さまざまな教授者、ファシリテータによって、学習者の行うどんな行動やにも、それが付随させられる傾向が強くなっています。
   
 ただ、ふりかえりが、いわば「ブーム」のように消費されていくなかで、「ああ、もう一歩、踏み込めばいいのにな」と思えるような「プチ残念なふりかえり」も年間で2万件くらいは生まれているような気がします。要するに、ふりかえりが
「形骸化」しているのです。

  
 自戒をこめて申し上げますが、僕がよく目にする「プチ残念なふりかえり」の典型例は、下記の3つです。
  
1.うすうすな振り返り
2.ダメだし振り返り
3.自己目的化した振り返り
  
 今日は、それらを概観してみましょう。
  
  ▼
  
 ひとつめの「1.うすうすな振り返り」とは、たとえば、下記のようなものです。
  

Aさん「今回はさ、よかったよね」
Bさん「ラッキーだったね」
Aさん「そうそう、次回も、そうなるといいね」
Bさん「だよな」

  
 そうね・・・ふりかえりなんで、確かに「過去」を思い出している。
 しかしながら、その「過去」の「よさ」や「ラッキー」さ・・・すなわち「運」だけに言及するだけで、その場において「自分たちがどのような行動をしたのか」は、何も言及されていない。これが「うすうすな振り返り」の典型例です。でも、よくありますよ。
   
 振り返りは「自己の行動の回顧」であり、それに基づく「未来への構想」です。自己の行動なき振り返りは、「自分の運のよさ、悪さを思い出している」に過ぎません。
  
 うすうすなふりかえりは、「あなたの行動」が見えないふりかえり、と言えるかもしれません。
  
  ▼
  
 2つめの「ダメだし振り返り」は、自分の行動の「悪いところ」だけを徹底的に理詰めでダメ出しする振り返りです。
 ふりかえりでは「失敗体験」でなく、「成功体験」をも振り返ることが大切なのですが、どこか、みなさん、真面目なのか・・・振り返りというと、「失敗体験のダメだしばかり」をやってしまう傾向があります。
  
 極端な話、失敗体験を振り返って、得られるものは「マイナス10」を「0」にすることです。つまり、それは「マイナス」を「ゼロ」に近づけるので、何も生み出していません。
  
 しかし、成功体験を振り返って、その成功体験を繰り返すことができるのなら、「プラス1」を繰り返し経験し、場合によっては「プラス2」とか「プラス3」にもできるかもしれません。
 プラスの世界を蓄積するので、こちらのほうが生産的であるように思えるのですが、いかがでしょうか。
  
  ▼
  
 最後の「自己目的化した振り返り」とは、振り返りすること自体が「自己目的化」してしまっている振り返りです。
  
 本当にふりかえった内容を、のちの経験に活かそうとひとが思うならば、なんらかの方法で、それを記録し、思い出したり、リマインドする努力が必要だと思うのですが、こうした振り返りでは、振り返りすること自体が自己目的化しているので、あとでリマインドする努力がなされません。
  
 結果として、もう一度、過ちを繰り返してしまう、ということが頻出します。
 うーん、もったいない。
 プチ残念です。
  
  ▼
  
 今日は振り返りのお話をしました。
  
 皆さんの現場では、自己目的化した薄々なダメだし振り返りがなされていませんか?
  
 あなたは、自分の学習者に、自己目的化した薄々なダメだし振り返りを促していませんか?
  
 そして人生はつづく
  
 ーーー

追伸.    
 先だって、過去6年間続いた「美瑛・地域課題解決プロジェクト」が無事終了しました。
  
「美瑛・地域課題解決プロジェクト」は、地域での課題解決とリーダーシップ開発を混合し、1粒で2度おいしいを実現したプロジェクトでした。このプロジェクトは、「これからのリーダー」のひとりひとりに向き合い、彼らの状況やコンディションを「固有名詞」で語り、各社人事が伴走したプロジェクトでもありました。
  
アサヒビール、電通、ヤフー……エース社員研修に潜入
https://president.jp/articles/-/15734
  
美瑛町異業種人材育成研修「地域課題解決プロジェクト」
http://town.biei.hokkaido.jp/administration/administration/kadaikaiketsu/
    
 僕自身は、このプロジェクトから多くを学び、また、僕自身が「変わること」ができました。
 6年前にお声がけいただいた本間浩輔さん、池田潤さん、志ある各社人事の皆様に、この場を借りて御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。180名の参加者のみなさま、長い人生、道中、どこかでまたお会いしましょう!
  

  
 最後になりますが、リーダーになる皆様に、毎年、プロジェクトの最後に僕がお贈りしていた詩(僕が好きな詩)をご紹介させていただきます。
  
 どうか志が弱くなった日には、お互い、思い出しましょう!
 またお会いしましょう!
   
  ▼
  
 自分の感受性くらい
 茨木のり子
   
 ぱさぱさに乾いてゆく心を
 ひとのせいにはするな
 みずから水やりを怠っておいて
   
 気難しくなってきたのを
 友人のせいにはするな
 しなやかさを失ったのはどちらなのか
   
 苛立つのを
 近親のせいにはするな
 なにもかも下手だったのはわたくし
   
 初心消えかかるのを
 暮らしのせいにはするな
 そもそもが ひよわな志しにすぎなかった
   
 駄目なことの一切を
 時代のせいにはするな
 わずかに光る尊厳の放棄
   
 自分の感受性くらい
 自分で守れ
 ばかものよ
  
  
   
  ▼
    
 なお、地域課題研修の二期生、片岡秀夫さん(パーソル)、白石陽介さん(元ヤフー)、矢儀田 汐理さん(パーソル)、松山 馨太さん(ヤフー)、武井 伸悟さん(懐かしい!元パーソル、初代メンター)から下記のプレゼントをいただきました。「そして人生はつづくTシャツ 」です。ありがとうございます。
  
 Tシャツの写真は「大学の助手」になったばかりの25歳の僕です。この写真、何処から見つけてきたんだか、笑。あれからはや約20年。1年1秒で、20年20秒の全力疾走でした(笑)。
  
 若き4人のリーダーの皆様は、それぞれの領域でご活躍ですね。
 たまに、皆さんのご活躍を風の噂で聞きます。
 どうか心ゆくまで暴れてください!
 また会おう!
   

   
 ーーー
  
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