コラム:韓流eラーニングの先に広がるもの
今度、大総センターから出されるニュースレターに掲載されるコラムです。もったいないので、ここでもご紹介。
-----
韓流eラーニングの先に広がるもの
▼「韓流」・・・これを「かんりゅう」と呼んではいけない。「はんりゅう」である。2年前ほどから「Made in Korea」の映画やドラマの接頭語として使用されるようになった。ヨン様こと、ペ=ヨンジュンが主演するドラマ「冬のソナタ」に代表されるように、ここ数年、韓流の映画やドラマが大変な勢いを維持している。
▼「韓流」は、情報通信技術を活用した学習である、いわゆる「eラーニング」の世界においても当てはまる。ブロードバンド社会にいち早く移行した韓国は、eラーニングにおいても、世界でトップレベルの発展を見せている。
▼韓国のeラーニング最大手に、大学受験対策用のWebビデオ授業を提供している「メガスタディ」http://www.megastudy.net/社がある。同社の提供する、韓国でもトップクラスの人気講師による授業は、年間60万の受験生人口のうち、50万人程度が利用している。授業料は日本円で6000円程度。高すぎず、安すぎない価格設定である。
▼筆者は、2005年より、総務省の主導するeラーニング関連委員会の副会長を仰せつかっている。このたび、韓国の教育人的資源部(韓国の文部科学省)、民間企業、ITベンダー、学校等を訪問し、同国のeラーニング事情 - いわゆる「韓流eラーニング」について視察を行ってきた。
▼今回の視察はかなりの強行軍だった。日によっては、夜までパワーミーティングが続いた。多くのミーティングが何より印象的だったのは、何人もの人々によって語られた「公教育の正常化(Justification of the public education)」という言葉である。韓国は受験戦争まっただ中である。多くの家庭では、子どもを塾に通わせ、徹底した受験教育を行っている。教育人的資源部のある役人は語る。「収入の4割を教育費にあてる家庭も少なくない」。
▼韓国政府は、eラーニングを「塾などの私教育の拡大のために、崩壊寸前だと言われている公教育を補完する手段」としてとらえてられている。これが何より、筆者にとっては新鮮だった。
▼政府は躍起になって、公教育の信用回復をめざす。eラーニングサイト「サイバー家庭学習」をはじめた。韓国教育放送EBSは、最近、大学入試用の一流講師による授業コンテンツを無料でダウンロードできるようにした。また、u-learningという概念のもと、小学校でタブレットPCなどを子どもに持たせ、学校と家庭での学習をつなぐ試みもスタートさせた。これが本格化すれば、教師が目をかけなければならない領域が、家庭にまで広がる。
▼「民間でできることをなぜ政府がやるんだ! 彼らに魅力的な教育がつくれるわけがない・・・これ以上、民間業者の邪魔をしないでほしい」 民間のeラーニング業者の中には、政府の行うことに批判的なものも多い。一方で、政府関係者はこう言う。「ソウルの子どもと地方にくらす子ども、同じソウルでも、漢江の北と南にすむ子どもでは、明らかに家庭環境が異なります。教育格差をなるべく拡大させないことが公教育の役割です」
▼eラーニングを透かしてみれば、その背後には激しい公教育と私教育のせめぎ合いが見て取れる。韓流eラーニング、その行き着く果てには、「教育の私事化・市場化」という「教育学」が抱える最大の問題空間が広がっている。
なかはらじゅん(教育学)
投稿者 jun : 2006年01月21日 14:56


















